「JIN-仁- 完結編」まとめ後編

「JIN-仁- 完結編」まとめ後編
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■九話
歴史の修正力に必ずしもあがらえないわけではない!仁は坂本龍馬暗殺を避ける歴史を望み、咲と佐分利裕輔を伴って京都を目指した。咲はもちろんだが、佐分利を伴うのは医師としての腕がたしかなのもあるが、歴史の修正力によって自分に何かあった場合のためでもある。あの強烈な頭痛に見舞われたら自分は何もできない・・。

龍馬に会いたい!仁は強い決意を秘めて京を目指していたが・・。龍馬はすでに手配書が出回っているほどの罪人扱いだった男。実は隠れ潜んでいてそう簡単には見つからないとはまだ知らない。
たとえ大政奉還が成功して無血で革命がなったといっても、幕府にしてみれば政権を返してしまったわけで、幕府の人間にとっては龍馬に対する見方は罪人どころか自分達の誇りと地位を奪った憎憎しい輩としてしか写らない。
かといって龍馬の味方であった薩摩や長州も、確実に武力倒幕したかったのに、大政奉還でそれが見事にはずされてしまったのだ。龍馬のやっていることはさぞ裏切り行為とうつってもしかたがない。確実に仕留めておかなければ徳川はまた芽を吹き返すだろうことを恐れていたのだから・・。

道中立ち寄った宿街で偶然、橘恭太郎と出会う仁達。兄の出現に特に驚く咲だったが、家に帰ってはどうだ・・?と恭太郎の言葉や態度になにやら深刻なものを感じるのだった。「咲をよろしくお願いします。末永くよろしくお願いします・・。」恭太郎が見送るときに言った言葉は鈍感な仁にはわからなかったが、恭太郎の決心が隠されていたのだ。

新政府の体制や人選を薩摩に提案する龍馬。龍馬はあいかわらず日本の未来のために知恵をしぼり奔走していたが、その新政府の人選に自分の名前は入れていなかった。「わしゃそろそろ、こういうことから身を引こうとおもうとるがじゃ。世界の海縁隊でもやろうかのう。」龍馬は西郷と大久保にそう言った。海援隊ではなく海<縁>隊。。世界中の女子達に会いに行きたいと龍馬は熱弁していた(笑)仁が歴史に関わったことで変な様子になってしまったね(笑)
だが、ずっと龍馬を護衛してきた東修介は、そんな龍馬を微笑ましく見ていたのだ。最初、龍馬の事を嫌悪していた東だったが、今では龍馬の心根と壮大さに感銘し、いっしょに海<縁>隊の世界の海に乗り出すと思っていたのだ。。
しかし。大久保はそんな龍馬を憎憎しげに見つめる。これ以上龍馬にかき回されるのはごめんだ・・。西郷は大久保の心を見越して待ったをかけるが・・。

一方。京の寺田屋で宿をとった仁達一行。そこを拠点に日々龍馬を探し歩くが、当てもなくどこにいるのかも知らず、しかも本人自体も逃げ回っている状態なわけで、知っている人間がいても場所を教えてくれるはずもなかった。仁は大政奉還がなって少しののちに龍馬暗殺が起きるという知識があったので気持ちばかりが焦る。だが、土佐藩邸にいっても追い返される始末ではどうすることもできない・・。

だが!仁は東と偶然出会うことができたのだ!これで龍馬に会える!
しかし。大久保は幕府の見廻組に龍馬の居場所を密告していたのだ・・。刻一刻と歴史のとうりに龍馬暗殺は近づいている。
史実の龍馬暗殺は見廻組とされているが、他の説が色々でてしまうのは龍馬特有の立ち居地所以であろう。暗殺という呼び名でこの事件が呼ばれている以上は、何か単純ではなかったからでは?と思ってしまうのもしかたがない。この謎がまた、幕末の魅力でもあるのだ。

仁達は龍馬と再会できた。「ひさしぶりじゃのう!先生!」龍馬もうれしそうだ。あの時、仲たがいしてしまった以来であったから、ふたりはこの再会をどんなに待ち望んでいただろう。だが仁は、「いますぐ京都をでましょう!」とせわしい。そこへ中岡慎太郎も登場してしまったからややこしくなった。中岡は龍馬と同じタイミングで薩長同盟を考えていたりと頼もしき男で龍馬と盟友関係にある土佐の志士だ。幕末ファンなら飛び上がって喜んでしまうようなふたりだが、仁にとってはそこまで頭が回らない。ともかく近江屋から寺田屋に場所を移すとこまではこぎつけた仁。

寺田屋に移って、中岡は龍馬と親しげな挨拶をかわしそこを出る。帰り道に薩摩なまりの怪しげな集団を見かけた中岡は彼らに近づくが、その瞬間に惨殺されてしまった(泣)龍馬と共に暗殺される史実とは違う場所で・・。歴史の修正力は確実に龍馬暗殺へと向かっているのか!?

五人は軍鶏料理をしこたま楽しんだが、東は護衛に寺田屋の外へ行き、咲と佐分利はふたりきりにして欲しいと頼む龍馬によって、その部屋は仁と龍馬ふたりきりになった。
「・・先生?わしゃ昨日殺されるはずだったかえ?そんで先生はわざわざ京くんだりまでわしを守りにきてくれたがかえ?」「・・だって約束したじゃないですか。」仁の笑みで龍馬も苦笑いし目を細めた。「まっこと、まっこと先生は・・。ところで先生、わしはここらでおらんなってもええかえ?」「えっ!?」「もうこのへんで国に関わるのはやめてもええかえ?」「・・そういうことですか。なんで私にそんなことを?」「先生はわしの道しるべだったきにゃあ。」その言葉は仁にとって、とてもうれしい響きだった。
龍馬はよくわからないまま攘夷派の志士になった時、仁がコロリの治療をひとりで奮闘しているのをみて、自分が正しいと思ったことをやる勇気をくれたと言う。そして、長州と幕府の戦の時も自分に言ってくれた・・。「先生はわしにとって夜の海に光る道しるべじゃ。」龍馬の言葉はうれしかった。でも、それが仁には別れの言葉に聞こえてしまうのだ・・。「龍馬さん。私は。私は龍馬さんの声に導かれてこの・・!」その時!仁にあの頭痛が襲う。龍馬本人を目の前にしても、こういう直接的な歴史の修正力が仁を襲うのだ!あまりの激痛にのたうちまわる仁を見て龍馬は、「咲さんを連れてくるき!」部屋を出て行く。咲が部屋に飛び込んでくると、仁は龍馬の居場所を尋ねた。「水を汲みに。」

龍馬が下に降りると、怒声と刀同士の切り結ぶ音が激しく聞こえる。「ほたえなや!」見ると東が幕府の役人数人と斬りあっているではないか!龍馬は飛び出していくが!ひとりの足を切り裂いた東の身に、もうひとりの役人の刀が斬りつける。「なにをしてるがじゃ!!」龍馬の叫びに東も叫んだ。「来ないでください!!逃げてください!」龍馬には刀も銃も今手元にはなかった。そこへ!ギラリと光る刀が龍馬の目の前にかざされた!持ち主は橘恭太郎!「恭殿・・。咲さんと栄さんを人質に取られたがかえ?わしを斬ったら死ぬつもりかえ?・・まことにそれしか道はないがかえ!?」龍馬の問いにも、恭太郎の目は血走っていたのだ。「兄上!」「恭太郎さん!」仁も咲に肩を担がれながら降りてきていた。「ごめん!!」恭太郎の振りかざされた刀を、飛び込んだ東の刀が間一髪はじく!「やめろー!!」仁は龍馬の傍に駆け寄っていた。そこへまた、役人が龍馬に向かってくるのだ!東は刀を回した!その刀身は龍馬の額をザックリ切り裂いていたのだ・・!その龍馬の血が仁の顔面にバッと振りかかる!場は沈黙した。「・・龍馬・・さん。」龍馬はその場に倒れていたのだ・・。


■十話 最終章前編
仁の目の前で、坂本龍馬の額が切り裂かれた!その鮮血が仁の顔に飛び散る。斬りつけた本人は、龍馬をずっと護衛してくれていたはずの東修介だった・・。彼は誤って刀を龍馬に当ててしまったわけではなかった。東は苦悶の表情で語りだす。自分の兄は龍馬に斬られたと・・ずっと仇討ちの機会を狙っていたと。「・・そんな話、今更わしが信じると思うかや?・・これもわしを守るため・・じゃろ?」龍馬はもう息もたえだえに地面に横たわっていた。橘恭太郎達、幕府の役人もいつのまにか姿を消している。咲はあまりの事態に顔面蒼白で無言。仁は必死に龍馬を抱き起こした。「・・南方仁がおれば・・坂本龍馬は死なん・・。そうじゃろ?」「はい。助けます。」それを聞くと龍馬は笑い、そして目を閉じた。

仁はこの時のために咲と佐分利を伴って京都まできたのだ。仁達の医療機器は万全に用意されている。できれば、こうならない未来を作りたかった。でも、龍馬はやはり斬られてしまったのだ。今は龍馬を何が何でも助けるしかない。<俺はきっとこのために、ここに来たんだ。坂本龍馬を蘇らせるために・・>

龍馬の傷は脳にまで達するほどの深い傷。頭を総髪にして、メスを入れる。なんといってもその<頭蓋骨>を道具で削り、ギリギリと裂いて、見事に治療部分だけを蓋をとるように取り外す。硬膜を切開して、屑となったものを除去し、脳挫傷によって腫れてくる脳みそにチューブを慎重に刺して、チューブの芯を抜くと大量に血が噴出す。そして縫合。チューブを数日は残しておき、腫れを防ぐ血の除去、栄養を与えるのとペニシリンでの消毒。さっき取り出した頭蓋骨の一部の部分を大腿部に保存させておくのは、あとで頭蓋骨を修復させる時までの保存場所が大腿部が一番いいからだ。手術中に例の頭痛が起きるときは佐分利にかわってもらう。龍馬の口にもチューブをつけて、その先は自発呼吸を促すポンプのようなもので呼吸に合わせて空気を送り込む。脳に対しての処置は済んでも、まだまだこれからなのだ・・。

目を覚まさない龍馬に、旅の途中であずかっていた野風からの龍馬宛の手紙を読ませて聞かせる仁。野風はずっと、龍馬のやさしさに支えられてきたことを龍馬に伝えたかったのだ。「龍馬さん。野風さんからの待ちに待った逢引きのお誘いですよ。行かないでどうするんですか。」!!さすが龍馬。一瞬自発呼吸をする(笑)
それからも未来の乗り物の話、携帯電話の話、メールの話、「龍馬さんだったら携帯鳴りっぱなしですよ。」仁の笑いに、龍馬はついに目を覚ますのだ。奇跡が起きた。

目はうつろで言葉もたどたどしいが、龍馬はハッキリと意識があった。夢の中で未来の世界を見ていたようだ。「先生には・・この時代はどうみえたがじゃ?・・愚かなこと山ほどあったろう?」「・・教わることだらけでした。ひとりで生きていけるなんて、文明が作った幻想だなあって。人生って一期一会だなって。あと、ここの人達は笑うのが上手です。龍馬さんには本物の行動力、教わりましたよ。龍馬さんは親友で、悪友で、私のヒーローでした。」「・・わしゃ先生の生まれてくる国・・作れたかのう?先生のような、やさしくて馬鹿正直な人間が・・笑おて生きていける国を・・。」「はい!」龍馬の手を握る仁は、もう涙でぐしゃぐしゃだった。龍馬の脈は止まる。心臓はもう動いていなかった・・。

「龍馬さん!!」仁はこれからの歴史を知ってるかぎり叫びながら龍馬に心臓マッサージをほどこす。龍馬さんがいなくなったあとは大変なことが起きるんだと。
(もうやめるぜよ先生。ほれ、いっしょにいくぜよ)龍馬の声が頭上からするが、仁にその姿は見えない。「どこに行くってゆうんですか!?龍馬さん!」仁は号泣するしかなかった。咲も佐分利も、力尽きたようにうなだれていた。坂本龍馬は死んだ。

東修介は後日、自害して果てた。彼の兄は久坂の命で龍馬を襲ったひとりで、龍馬の一刺しで絶命したのだ。たしかに仇と思い憎んでいた東。しかし、龍馬の傍にいて、その気持ちは揺らいでいき、いつしか龍馬を好きになっていたはずだ。東が守ろうとしたものは、龍馬の志だったのでは?と西郷は推測する。そして、咲も。
あのまま幕府の人間に討たれてしまえば、龍馬が果たした無血で幕府を助けたともいえる大政奉還の意味合いが、なくなってしまうのだから・・。
だが、歴史の針は進む、戊辰戦争へと。西郷率いる官軍と化した薩長軍は、幕府の残党兵を掃討しながら江戸を目指している。もはや幕府にまともに戦う力は残されていない、ただ蹴散らされていくだけだった。新撰組などもこの戦いで滅びていく。龍馬の命が支えていた無血という奇跡は、龍馬の死によってなくなってしまったのかもしれない。

仁は考えていた。自分は龍馬を救えなかったばかりか、咲にもなにもできていない・・。兄である恭太郎が龍馬を斬りにきていた場面を見るなんて、自分がここにこなければ起きなかったことではないのか?ただ、運命の歯車を狂わせているだけ・・。未来で手術した、頭に胎児の腫瘍のあった包帯グルグルの男、あれは自分だったのだろう。龍馬が死んだ今となっては・・。

仁友堂に戻ると3人は驚愕する。仁友堂の門は閉められ、壁や門には、<人殺し>などの落書きがたくさん書き殴られていたのだから・・。実は三隅俊斎の罠で、偽のペニシリンの技術を売ったという嫌疑がかけられてしまったのだ。ひたすらに仁をおとしめようとする三隅。仁のいない間に仁友堂は潰されてしまった!

かにみえたが。医学館の多紀元琰、医学所の松本良順、勝海舟、吉原の鈴屋店主・彦三郎。みんながこの事件に動いてくれていた。そして、三隅の企てを看破し、逆に三隅を罠にはめ、見事三隅はお縄となっていた。仁の今までの労力と人徳が、仁友堂を救ったともいえる。だが、嫌疑の取調べで拷問を受けた山田純庵は、体を仲間にまだ支えられ、その頭は白いものが混じってしまうほどになっていた・・。
仁はみんなに仁友堂解散を伝える。みんなは自分に関わらなければ、それぞれちゃんと出世していたはず。こんな苦労もしないですんだ。自分にはどうやら脳に腫瘍がある、もうここを続けていくことはできないと・・。
「私達に病人を置いて出て行けとおっしゃるのでございますか?そのようなお言葉に従っては、緒方先生に向ける顔がございませぬ!」<国の為、道の為>そう、みんな医のために命をかけている仲間達だったのではなかったか!?「先生、私共に持てるすべてを教えてくださいませ。」咲が言う。仁はみんなに感謝する涙でいっぱいになっていたのだ。

攻め上ってきた西郷と勝の対談が行われた。「江戸を火の海にしたってひとつもいいことはあるめえ?列強の餌食になるだけだろ?」「坂本さあが、以前同じこつを言われもしたど。」「あんた勘違いしてるよ。おいらがあいつを真似してるんじゃねえ、あいつがおいらの真似をしてんだよ。あいつとおいらはいっしょなんだよ。あいつは終わっちゃいねえんだよ!西郷さん。」「・・・わかりもした。」西郷は言った。「・・そうかい。」安堵の溜息をもらす勝。江戸は戦場にならずにすんだのだ。
その江戸で、仁はひたすらに医の道にはげんでいた。頻繁に頭痛は襲ってきていたが、できるかぎり伝えようとはげむ。<時代と俺と、先にいくのはどちらだ!?>


■最終話 最終章後編
南方仁の頭痛は日々悪化していった。基本顔色も悪く、嘔吐もある。脳腫瘍はいよいよ仁の生命を蝕み始めたのか?それでも日々、仁友堂の仲間達に、もてるすべての医術を授けようと講義する仁。自分が死んだら遺体を腑分けして医術に生かして欲しいとまで言うのだ・・。咲は、もし元の時代に戻れるのなら治るのでは?と言うが、そんな簡単に時代を行き来できないことは仁本人が一番わかっていた。ただ咲は仁のことが心配だったのだ・・。治したいのに手のほどこしようがない。辛い日々が続く。咲にとっても。仁友堂のみんなにとっても・・。

世の中は徳川幕府がなくなる明治の手前まで来ていて、大政奉還もすでに起きていたのだ。だから徳川の人間はあちこちで兵を上げる。それは薩長を中心とした新政府軍に鎮圧される運命にあるのだが・・皆、死に花を咲かせようとしていたのかもしれない。橘恭太郎も徳川の家臣として彰義隊に参加していたのだ。(友人であったはずの坂本龍馬を斬りにいって結果、彼は死んだ。自分だけのうのうと生きていくことはできない・・)それが恭太郎の、徳川に対する忠義だけが誇りである彼の、生き様だった。「おまえがいくら悔やんだってあいつは帰ってこねえんだ。前を向けよ恭太郎。」勝海舟にそう言われても、恭太郎にはそれしかなかったのだ・・。

栄にそれを聞いた咲は、兄を連れ戻して再びこの家の門をくぐらしてもらいます!と飛び出していく。栄は子供達をいっぺんに失うかもしれない事態に泣くしかない。「・・恥をさらそうが生きてこそって・・。そのような世の中がくるのでしょうか?私達が信じてきた道は間違いだったのでしょうか・・?」そんな栄をなぐさめる仁。恭太郎さんはひとつだけ間違っていますと。恭太郎は徳川を守るために生きてきていたんじゃない、実はいつもいつも、橘の家を守るために生きてましたよ・・と。

咲はなんと、銃撃が行われている戦場の中に飛び込んでいったのだ。(無謀すぎるだろ・苦笑)彰義隊と官軍が切り結び、銃弾が飛び交う中、女子が必死に兄を探しているのだ。戦況はほぼ銃撃で一掃される彰義隊が不利だったが、そんな中、逃げる恭太郎の姿を咲は発見した。「兄上!」驚愕する恭太郎。だが!その瞬間に咲は銃弾の流れ弾に打ち抜かれていた!

仁達が作った戦争で傷ついた人達を治療する診療場所に、咲が恭太郎におぶられて運ばれてきた。仁は驚愕する。しかし、咲はそこで治療を受けながらボウッと眺めていたのだ。(蘭方医と本道の医師が同じ場所で治療をしている・・こんな日がくるなんて・・)それを導いてきたのは南方仁なのだ。
彰義隊の人達は治療をしてもまた戦場にでていく。その命は結局助けられないものだったのかもしれない。でも誰ひとり治療を放棄する人間はいなかったのだ。そして、恭太郎自身は踏みとどまってくれたのだ。

咲の傷の容態は悪かった。弾は取り除かれたが、緑膿菌に感染していて膿んでいた。これにペニシリンは効かない。体力を戻し免疫力をつけ自然治癒を望むしかない。しかし・・咲の容態はいっこうによくならない。それでも咲は仁に笑顔をみせていた。
咲のそんな姿を見ていたら仁は、思わず咲を抱きしめてしまった。ふたりきりの空間に穏やかな時間が流れている。ただそれだけだが、そこにはお互いを想い合う愛おしさがたしかにあった。そして仁は突然思い出していた。<タイムスリップする直前に、非常階段で転がっていたホスミシンの小さな瓶を拾ったこと>
「咲さん!すぐ戻ってきます。絶対に治します。じゃあ・・行ってきますね。」ふたりの手が離れる。咲は、その仁の後ろ姿を、愛おしそうに見送った。

仁はみんなや恭太郎、栄に家の捜索を頼む。<どこかにないですか!?6年前に幕末に来たときに。落としてないだろうか!?>家中の箪笥をひっくり返し、庭を捜索。でも、みつからない。仁と恭太郎はふたりが最初に出合った場所も捜索していた。<戻るぜよ!先生!咲さんを助けたくば戻るぜよ!>頭の中に龍馬の声がする。(出口と入り口は違う!)もう仁にはわかっていた。タイムスリップに導かれている。<戻るぜよ先生。あの世界へ>そんな時。林の中から官軍の兵士がふたり残党狩りで現れた。止まれ!と仁と恭太郎に呼びかけるが、今の仁が止まるわけがない。いきなり刀で額を斬られた仁。恭太郎が慌てて前にでて斬り結ぶ。「先生お逃げください!早く!」仁は額から血を流しながら、頭の腫瘍からの声に導かれるように這うように前に進む。「咲さん・・。」<戻るぜよ。あの世界へ>仁は崖まで辿り着いた。そこから仁は、真っ逆さまに落ちていった・・。頭にある胎児の腫瘍は龍馬だった。彼が仁を導いたのだ。


仁は龍馬と夕焼けの海で談笑していた。ふと龍馬が立ち上がる。「ほいたらのう。先生。」突然、龍馬は海に入っていくのだ。慌てる仁。龍馬は腰くらいまで海につかってから浜辺にいる仁に振り向いた。「先生はいつかわしらのことを忘れるぜよ。」「えっ?」「けんど悲しまんでええ。わしらはずっーと先生と共におるぜよ。みえんでも、聞こえんでも、おるぜよ。いつの日も、先生と共に。」龍馬は笑い、再び海に入っていった。これは・・夢?

現代では。南方仁が包帯グルグルの男の脳から胎児の形をした腫瘍を摘出していた。術後、包帯男は必死の形相でベットから起き上がり、薬を探しに薬剤室の棚を探し出す。包帯男は、幕末からタイムスリップしてきた仁だった。ホスミシンを探し出し、胎児の腫瘍が入った瓶とメディカルバックを持ち出す。(今度は現代にいる自分ではなく、俺がタイムスリップしなければ!)
だが、非常階段でホスミシンの瓶を転がり落とし、それを拾ったのは現代の仁だった。包帯の仁を追いかけてくる。<戻るぜよ。あの世界へ>追いかけて階段を昇ってくる現代の仁をふりほどこうとして、仁は胎児の瓶とメディカルバックを離してしまった!それを掴もうと階段を転がり落ちて、バッ!と姿を消したのは・・現代の仁だったのだ。それは、同じことが再び起きたことを表していた・・。「咲さん・・すいません。」泣き、そして・・気絶してしまう仁。
幕末では、仁の消えた崖で、恭太郎がホスミシンの瓶を拾っていた。仁の姿はなかった・・。

再び目をさます仁は、普通の良性腫瘍手術を受け、頭の傷も治療されていたことになっていた。同僚が自分を手術してくれたらしい。着物ではなく普通の服だったし、胎児の瓶もなく、友永未来の存在もない。この現代は自分の起こした出来事で違ってしまったのかもしれない。仁は勇気を持って過去になにが起きたのか、たしかめることにする。幕末での仁友堂のみんなは?そして咲さんは?どうなっていたのか?

調べると、仁友堂とみんなは、歴史に名を刻んでいた。ペニシリンを土着的に生産し、異なる医術を結びつけ当時の医学の反逆者ともいわれた医療結社、それが仁友堂。仁は佐分利や山田の名が載っていることにうれしさで目頭を熱くさせる。でも、咲のことは載っていないのだ。なぜ?そして・・自分も載ってはいないのだ。

仁は橘家のあったであろう場所にいってみた。そこは橘の看板を掲げた医院だった。そこへ、友永未来、いや野風とうりふたつの女性がそこの医院に入ろうとした。仁は呼び止める。話を聞きたかった。「・・いいですよ。」女性は笑い、中へ入れてくれた。

話によると女性の先祖である橘咲は明治維新のあと実家を改装して橘医院を立ち上げる。女性だてらの医師だったが、小児科や産婆も行っていたため、医者というよりは産婆さんという印象を皆が持っていたらしい。咲は友人の子供を引き取ってその子を養女とし育てたと。その子供は安寿!
仁は感動した。咲は生きていて、野風とふたりで起こした奇跡のめぐり合わせに。だからこの女性は未来と野風にそっくりなのだ。自分の存在は話から確認できない。でも、日本の医療負担が世界でもっとも低いのは龍馬の精神が受け継がれているからでは?とも女性は言った。それは自分が龍馬に教えた保険のことが船中九策として書かれたからかもしれない。自分の存在だけはスッパリと消え去っているが、自分のしてきたことは歴史に残っていたのだ。

女性はある手紙を渡してくれた。それは仁宛ての手紙だった。内容は、忘れていくその人のことを、忘れないうちに・・と書いたものだった。○○先生へ・・それはその人への感謝と、愛が綴られていた。(私は仁を持つそのお方に、恋をしておりましたことを・・。橘咲は、先生をお慕い申しておりました。)仁は泣いた。「咲さん・・私もお慕い申しておりました。」

この世界は、過去の人達の気持ちや行動が紡いできた、奇跡の形なのだ。仁はみんなの顔を思い出していた。いつか自分も忘れてしまうかもしれないけれど・・。
でも、仁はその後。手術に積極的な、医学に前向きな医師として生きていく・・。

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