「JIN-仁- 完結編」まとめ中編

「JIN-仁- 完結編」まとめ中編
画像
http://www.tbs.co.jp/jin-final/
■五話・六話
南方仁の体は、お初の手術中に消え始めた。咲も仁の異変に気付き、声をかけるが!すでに彼の体はそこになかった。そして、うまくいっていたはずの手術も、傷口から再び血が溢れはじめる。だがその瞬間、仁の体は戻ってきたのだ。慌てて傷を塞ごうとする仁だが・・お初の顔はもう真っ青になっていた。お初は死んだのだ・・。

仁は姿が消えているときに不思議なビジョンを見る。お初の成人した姿、お初が結婚式をあげている、そして、お初が背中に子供を背負い、現代の家には小学生の男の子。表札には南方の文字。男の子が空を見上げると、その顔は自分の子供の頃の姿ではなかった。

仁はそのことを咲に話した。自分が消えていた時にみたビジョン。そして感じていた。お初がもしこのまま生きていたら、未来がなにかしら変わり、自分は存在しないことになっていたのだと。
咲も思い当たる。喜一の母親を助けても、結局辻斬りによって命を落とした・・。「では・・これがお初ちゃんのさだめであったということでございましょう・・。」「・・前から感じていたことですけど、私は本当は、誰ひとり助けていないのかも知れません・・。私は何かを変えることなんてできないし、そんなこと望まれてもいない。神はあらためてそれを知らしめたんではないでしょうか・・。一番わかりやすい形で・・。」

後日。仁は勝海舟から、坂本龍馬が襲われたことを聞く。龍馬は幕府から謀反人として手配書が出回っている、いわば犯罪者。。潜伏していた寺田屋を捕り方が囲む。銃を撃ち、刀で斬りつけて、捕り方を牽制し倒していくが、すでに寺田屋は完全に囲まれ多勢に無勢。龍馬のほか、槍の使い手の三吉慎蔵も奮戦し、東修介も戦ってくれていたが、ついに龍馬は手の親指付近を切り裂かれる重傷を負う。史実では、その療養におりょうと旅行したことが日本初の新婚旅行と称されているが。
「それで龍馬さんは無事なんですか!?」「逃げのびたらしいよ。先生、こっから先、龍馬と関わる時には十分用心してくんな。」勝の言葉に仁も無言になる。橘恭太郎も神妙な顔をしてふたりの話を聞いていた。

仁は感じていた。自分という異物を抱えながらも歴史は史実どうりに進んでいっているのだろう・・。もし自分が坂本龍馬を助けられたとしても、それはつかの間の延命で、命を助けるなんてことはできないんじゃないか?歴史の修正力によってすべては無に帰してしまうのではないのか・・?だとしたら俺はなんのためにここに送られてきたんだ!?
「延命だけではいけないのですか?すべての医術は所詮、延命にしか過ぎぬのではございませんか?」咲の言葉は、自信を無くしていた仁の心をさらに暗くした。だが、その言葉があとで最大の救いになる。つかの間の延命のその瞬間に、長さでは語れない輝きがある。意味がある。とわかったからだ。
だったら。歴史の修正力に負けないなにかを残したい・・。仁は心の底から思うようになったのだ。そして・・咲の思わぬ調合(高濃度のアルコールとペニシリン)でペニシリンの結晶化に成功、これでペニシリンは粉末化に向けて本格的に動きだせることになったのだ。


仁達、仁友堂の面々はペニシリン普及のために奔走する。仁は横浜などにも講義をしに行き、今度は長崎へも。仁は長崎に行けば龍馬に会えるのでは?とも期待していた。今度こそ龍馬暗殺の事実を龍馬に教え、少しでも龍馬の命が助かる方向へと導きたい。しかし、その願いは偶然からすぐに叶った。講義していた精得館に、斬られたグラバーを連れて龍馬自ら駆け込んできたのだ。。

喜び抱きつく仁に、驚きの表情で龍馬ははにかんだ。グラバーはビジネスパートナーでのう・・と説明し、ともかく傷の手当を頼む龍馬。ここのオランダ軍医で教頭のボードウィンは目の傍を斬りつけられていたグラバーを初診し、視力は大丈夫だが涙は止まらなくなるかも・・と言う。そこで、仁のペニシリンの講義も信用していなかったボードウィンは、仁にグラバーの治療を頼んだのだ。「それではDr南方、お願いします。」治せるものなら治してみろ。ということだ。

涙小管は涙の配水管。そこが切り裂かれているので、ここを修復しなければいけないのだが。その際、癒着が起きて涙が溢れ出る可能性がある・・繊細な場所なのだ。通常、シリコンチューブを仮に通しておいて、癒着による閉塞を防ぐのだが、この時代にはない。(どうする?)仁は変わりにアルコール消毒した針金を使うことにしたのだ。そして目には特別に作っておいた拡大鏡をつけて細かい作業をよりやりやすくする。手術室には無尽灯(空気圧で灯油を自動補給する灯台)が設置され効果的に明かりも灯される幸運にめぐり合えた。
仁の腕前もそうだが、この細かい作業とアイデア、そしてその治そうとする熱意、すべてにボードウィンは感銘を受けていた。そして・・縫い終わった。あと一ヵ月後に針金を抜き去ればグラバーの目は完全に元に戻る。でも、すぐに生活に支障はないだろう。ボードウィンは仁に無礼を詫び、すばらしさに握手を求めた。

グラバーの治療が仁のおかげで早くすみ、龍馬の行動もすぐに起こせることになったようだ。龍馬は忙しいのか、仁に対してもどこかよそよそしい。隣には東修介の姿もみえる。仁はあの時助けた長州藩士が龍馬といっしょにいることを不思議な縁だと感じていた。「おひさしぶりです。南方先生。」東は仁に頭を下げる。だが龍馬と東は慌しくその場を去ってしまった。仁は龍馬に言えなかったのだ。暗殺のことを・・。

しかし。仁はそんな折見てしまう。龍馬達が武器を大量に積みこんでいるところを。龍馬は仁に事情を説明して、内緒で頼む。とお願いする。そして、ふたりで写真を撮るのだった。
龍馬は長州に武器を流していたのだ。武器を買うのを幕府から禁止された長州へ、薩摩名義で武器を買って流していた。これから起こる長州征伐に備えているのだ。

「先生が見たあの銃、ありゃ日本では最新型じゃ。けんど実は西洋ではとうに型落ちしたもんでのう。けしからん話じゃが、戦とは金のなる木じゃ!ガハハハ。」酒の入ったおちょこを持って笑う龍馬。たしかに現代日本の繁栄は朝鮮戦争の戦争特需によることが非常におおきい。龍馬のとなりには仁がいる。ふたりは飲み屋で飲んでいたのだ。「・・龍馬さんなにか変わった気がして。」「わしゃなんちゃ変わっちゃらん。そんなことより先生、戦になれば、ペニシリンも売れるがやないか?と思うんだけんど?」仁はペニシリンは粉末化に成功したが、熱にも弱い。まだまだ亀山社中で運搬するには向かないと説明。結局、現地現地で製造してもらうのが一番いいと笑う。「けんどそれやったら仁友堂の儲けにはひとつもならんではないかえ?まっことそれでペニシリンは広まるのかにゃあ?」「・・・。」「ペニシリンは高い薬じゃろう?先生が大量に作りわしが大量に売りさばけば、作るかかりも下げられると思うちょったがじゃ。うまいこといかんのう・・。」「保険があればいいんですけどねえ。」未来の制度の話をしていいのかどうか?一瞬迷ったが、仁は龍馬に説明した。国が治療や薬代の一部を払ってくれる制度を。「そうすれば皆が適切な安い医療を受けられるでしょ?」「それは・・ええ!先生はどこまですごいお人ぜよ!!」龍馬は払う国の係は講(江戸初期、お金を融通するために組織された相互援助の団体)のしくみにすればええ!と興奮した。皆が払えるぶんだけ少しづつ収めておけばええと。こういうアイデアがポンポン出てきて実行する能力があるのが、龍馬の最大の才能だろう。
「・・龍馬さん。実はもうひとつ聞いて欲しいことがあるんです。龍馬さんはこの先・・」!!突然、仁に激しい頭痛が襲う!龍馬本人に暗殺の事実を告げようとするとこの頭痛だ!歴史はここまで史実を変えることを拒むのか・・!?

仁は龍馬と共に長州に行く。龍馬は、長州にペニシリンを宣伝して製造所を作る許可をもらうチャンスだと言う。だがそれだけじゃない、仁は今、龍馬の傍を離れるわけにはいかないのだ。
船の上で仁は、龍馬に聞いた。「・・幕府を討つということは勝先生とも敵同士になるってことですよね?そこはどう思ってるんですか?」龍馬は海の先を指差し、清という国が列強に植民地にされたことを言った。「そうならん道はただひとつ、徳川の時代を終わらせ、この国を立て直すことじゃ。これはどういても必要な戦なんじゃ。勝先生もわかってくれると思うがの・・。」

その頃。勝海舟は橘恭太郎に愚痴を言っていた。幕府のやり方にいよいよご立腹なのだ。フランスから借金して軍備を増強し、長州を討って薩摩も討ち、そして最後はフランスから植民地にされるって図式なわけ。。
この頃、列強諸国は日本の植民地化に頭を悩まし、代理戦争を行わせることに切り替えていた。イギリスは倒幕側、フランスは幕府側、そういう感じで互いが戦争するバックにいて援護をし、消耗したところに介入しておいしい汁をすするつもりなのだ。勝のような柔軟性のある頭の持ち主なら先も読めるが、結局、幕府にはそこまで読みきれる人間が少なかった。わかっていてもギリギリまで列強を利用しようと考えていた。だから幕末は、できるだけ短時間に事を収めなければいけない事態に追い込まれていたのである。ちんたら戦争していたら、あっという間に諸外国に介入されてしまうからだ。
「・・あの坂本殿はこの戦には無関係なのでしょうか?」恭太郎はおそるおそる勝に聞く。勝はニヤリと笑い、楽しそうに答えた。「薩長の間を動き回って手を組ませ、倒幕を煽ってるって噂もあるねえ。」でも勝は、龍馬が敵じゃないと信じているんだ。と恭太郎に告げた。
恭太郎は咲に仁のゆくえを聞く。龍馬と関わっていると、もしかしたら戦に巻き込まれるかもしれないと・・。

長州と幕府軍・小笠原藩との戦が始まった。龍馬と仁は戦のゆくえを少し離れた長州勢の陣から見守っていた。海岸沿いの戦いは銃で打ち合い大砲が火を噴いていた。史実では龍馬達・亀山社中の人間達も長州軍艦を乗り回して小笠原軍艦を痛めつけていたらしいが・・。仁がいたため龍馬はいっしょに陸で戦闘を観戦していたのかも。
「なんじゃ!長州軍はおもしろいように勝っちゅうじゃないか!」龍馬は快哉を挙げている。「時代の流れを感じるのう・・。長州兵・・あれらは農民じゃ。武士だけがこん国を支配する時代は終わる。わしにはそうも見えるがじゃ。」だが、仁はたくさんの人間が銃で撃たれ、斬りあい斬られ、大砲で吹き飛ぶ姿に、なんともいえないせつなさを感じていたのだ。「いっけえ~!!」龍馬の狂ったような叫び声が聞こえる。そんな龍馬を、仁は今までみたことがないような暗い目で見つめていたのだ・・。

戦いは長州軍の圧勝で幕を閉じた。そのあと、幕府軍の残党を助けようとした仁は、目の前でその幕府兵士にとどめを刺す長州軍を見る。龍馬も呆然とする仁をせかすように言った。「これが戦じゃ・・。先生も行こう。」
だが、仁はまだ息があるその兵士を治療しようと駆けつけた。「先生!?」「やっぱり龍馬さん変わりましたよ。前の龍馬さんなら敵味方なく助けたと思います。やってることだって武器商人じゃないですか!?人殺しで金稼ぎしているだけじゃないですか!?」「何べんも言うけんど、これはどうしても必要な戦ながじゃ!」「戦だけが国をまとめる手段なんですか!?そんな方法でまとめるしか能がないなら、政権をとったってうまくいくはずがない!うまくいかなくなったらまた戦を繰り返すだけなんです。」「・・先に殺されたら、それでしまいながじゃ。まず相手を力を従わせんと、考えを述べることもできん!世を動かすことはできんがじゃ!・・先生は特別なお人じゃき、綺麗ごとばかり言えるがじゃ!」「・・私だって国をよくしようとして戦っているつもりです!・・。」仁は背を向けた。龍馬は治療をはじめた仁を置いて去ってしまう。・・悲しい決別。
仁はそのまま彼らを治療し、だが・・あとでその兵士達は長州軍の銃弾で撃ち抜かれ絶命する。(そんな・・。この人達を生かしたら何か歴史に問題でも起きるんですか!?)「なんで!こんなことをするんですかぁ!!」仁は天に向かって叫ぶしかない。すべては、歴史という渦の中で人は翻弄されるだけなのだろうか・・。

「ぼろくそに負けてるって?たかが長州一藩にかい!?」勝海舟は驚きの声をあげていた。理由は新型の兵器の存在、民草にまで銃を握らせていたという長州。勝は龍馬の存在の大きさを感じずにはいられなかった・・。勝自身は幕臣でも徳川という銘柄にこだわる人間ではない。だが、この時代の急速な変わりようは驚きだ。これで幕府の威信はますます落ち、それぞれの藩は幕府に従うのをやめていくだろう・・。何の力が今を導いているのだろうか・・?これが時代なのだろうか?少なくても、誰も予測も立てられないほどの速さで、歴史は変わり始めていたのだ。
仁も無尽灯を作った田中久重に会うことができた。彼は仁に助言する。あなた自身も渦に巻き込まれてしまったら意味がない。あなたは目的地に輝く道しるべとして。「先生ご自身が無尽灯のように。」「私自身が・・。」仁は、その言葉で自分のこれからの指針を見つけたような気がしたのだ。
仁は未来から持ってきていた豆電球を田中に渡す。田中だからこそ、その精巧な未来の道具に驚きを示せるのだ。「これがあればもっとよく見えるようになります。暗い渦の中からでも相手の笑顔が。」その仁の言葉で、田中も笑顔になった。

「ちくと道を間違えたかのう。のう・・先生。」龍馬はその頃、夜の海を見てそう静かにつぶやいていたのだ。


■七話
仁のもとに龍馬から手紙がきた。あれから喧嘩別れして気になっていた仁。手紙は仁と龍馬がいっしょに撮った写真、その裏に~長芋の中より出でたる虫たちの江戸の芋にもすくいたるかな~と一句書かれていた。咲とふたりで考えてみるに、龍馬は長州と薩摩の人間が江戸も食べてしまうぞと警告してきたのでは?と解釈。「やっぱりわかってもらえなかったのかなあ・・。」仁は少しさびしそうに笑う。でも、仁と喧嘩したあとにわざわざそれを強調するような手紙をよこすものでしょうか?と咲は言う。実際に戦っている龍馬の身になれば、自分の理想なんて絵に描いた餅と苦笑する仁。

龍馬は幕府にとって今は謀反人、幕府の旗本である恭太郎も、色々龍馬のことを仁に聞いてきたばかりだった。仁と龍馬は親友同士だとわかっているからだろう。
世は徳川の将軍は慶喜になり、いよいよ幕末も大詰めを迎えていると仁はわかっていた。なんとか歴史の修正力をすり抜けるようないい策はないものだろうか?龍馬暗殺をふせぐための・・。

もう一通の手紙は野風からだった。ルロンと野風は正式に結婚するので、その結婚式に仁と咲にきて欲しいという内容だった。喜ぶふたりは横浜へ。

外国人依留地は洋風の建物ばかり。咲は別世界へ来たようと目をしばたたかせていた。いづれこういう建物ばかりになりますよ。と仁。じゃあ・・と咲は悪戯ぽっい目をして仁に聞いてみる。「では、この先どうなるか教えていただきますか?」「えっ?」「・・大丈夫です。世がいかに変わろうと、私の成すべきことはこの手でひとりでも多くの人を助けることだけです。」咲の笑顔に仁も笑った。

ルロンの屋敷に案内されるとまずコーヒーがでてきた。仁は喜んで飲むが、咲はその黒き液体にド肝を抜かれていた。。野風とルロンが現れると四人は楽しげに挨拶。「おふたりにはどうしても婚礼にでていただきとうありんして。」「うれしいです!」「おふたりは同じお部屋でよろしいございますな?」だが、ふたりの態度で苦笑してしまう野風。「ではまだ?」咲は無言で野風に会釈。どんだけ奥手にもほどがある(笑)とういうより、プロポーズして振られちゃいまして・・とか仁には野風に言って欲しかった。。

夜の晩餐はシャンパンで乾杯。。野風は言葉の端端で咲の気になることを言っていたようだ。(野風さんは未来のことを知っている?)ルロンは野風は頭がいいのでどこに連れて行っても恥ずかしくないです。とのろけている。ルロンはかなり見た目おっさんだけど、あいかわらずやさしそうだ。。仁は思わず咲に振られたことを言いそうになるが、咲は慌てて酒を一気飲みして話をそらした。で、咲はベロンベロンになってしまう。「野風さんはまことに幸せでございましょうか?」「あんなに幸せそうじゃありませんか。」仁も酔っ払い相手に大変だ。「ではよいのでございましょうか?私も。幸せになりましても。私・・おばばになってしまいますよ。元々おばばのおばばでございますけどね。」ニヤニヤ独り言を言って床で寝る咲。もう部屋に運ぶのやめちゃえば(笑)

ようやく野風とふたりきりになる仁。野風はこれから診てもらいたい患者がいると言って部屋に仁を案内した。そして、案内したと思ったら着物をスルスル脱ぎだして全裸(笑)結婚式前夜に他の男に色気攻撃かよ!!「先生とお会いするのもこれで最後かとおもいんしてなあ・・。患者はあちきでありんす。」振り向いた野風は悪戯の笑顔で可愛かったが、実は岩(乳がん)の再発を疑い、仁に診て欲しかったのだ。

仁はしこりを探る。「・・・。」どう見立てても、野風の病状は悪かった・・。最近カラ咳がでるとむせる野風。「すいませんでした!」仁は涙目で謝るが、野風はそんな仁に感謝の言葉しか言わなかった。そして子供を宿していると言うのだ。「あちきはいつまで生きていられんしょう?」「二年・・もっと長く生きられる場合も・・。」「・・二年。そんなに長く。・・ならこの子を抱けんすなあ。笑い顔を見ることも。手を繋ぎ、歩くこともできるかもしれんせん・・。」野風は泣きながら笑っていたのだ。その健気さに泣ける(泣)
野風は心配するであろうルロンにも言わないと言う。そして。この子は自分の夢だと。この子は生きて、この子がまた子を授かり、自分は永遠に生きていく・・。

翌朝。仁は、二日酔いから立ち直った咲に野風のことを話した。癌のこと、子供のこと、野風の夢のこと。咲は真剣な眼差しになる。(野風さんはやはり・・)咲は思う。野風は自分の子孫が仁の想い人に繋がっているとわかっているのだと。なにがなんでも赤ちゃんを産ませてあげたい・・!咲は野風の赤ちゃんを自ら取り上げる決心をした。

結婚式でウェディングドレス姿の野風を眩しそうにみつめる仁と咲。みんなから祝福される野風は(本当に綺麗だ・・)仁は今までどれほど野風に助けられてきたか、支えられて生きてこれたか、この幕末で自分にとってどんなに大切な人だったか・・痛感していた。でも、この人の命を自分は、ちゃんと助けることができなかったのだ・・。仁の顔にはうれしさと悲しさが入り混じっていた。

「・・野風さんの夢は叶うのではありませんか?」咲は独り言のように言ったのだ。<この瞬間に強く想った未来なら、それはもう修正力の及ばないただの歴史ではないのか?>と。「野風さんはおそらくご存知なんです・・。だから命をかけても産みたいんです。」写真が消えてしまったのはもう一度生まれ変わるという暗示なのだと・・。
咲の言葉で仁は野風を見た。野風の投げた花は咲に向かって投げられていた。それをキャッチする咲。野風はどこまでも笑顔だった。仁は本当に眩しい野風を、見えなくなるまでみつめていた。<いいよ、仁先生。またきっと、いつか会えるから・・>いつかの夢の友永未来の言葉に、仁はうなずいて空を見上げた。

咲は仁に言う。龍馬の手紙、~すくいたるかな~は食べてしまうという意味ではなく<救う>という意味なのでは?と。仁はハッとした。龍馬はやはりわかってくれていたのだ。龍馬は戦争をしないでこの国を変える方法を模索して実行していたのだ。
だが、仁と龍馬といっしょに写っていた写真はいつのまにか誰かに盗まれてしまっていた・・。そして、龍馬が活動すればするほど、彼の命は終わりに近づいていく・・。大政奉還はもうすぐそこに迫っていた。


■八話
「私を奥医師にですか?」「上様からぜひ南方先生をとご指名がございまして。」仁にそう言う松本良順。だが彼は、受けることが仁友堂のためだと念をおすのだ。「上様には捕らえられた折にご一筆いただいたご恩もございましょう、その恩を忘れ反旗をひるがえしているご友人もおられるようで。」良順は龍馬のことを言っているのだ。龍馬と親交のあった仁友堂を守るためにも奥医師の話を受けておいたほうがよいという忠告だ。仁は深刻な顔をするもすぐに返事はできなかった。仁友堂の立場・・仁はまだピンときていないようだったが、橘恭太郎が仁と龍馬がいっしょに写っている写真を人知れず持ち出し燃やしたのも、仁や咲を守るためだったのだ。

仁は西洋医学所のその帰りに、仁を逆恨みしている厄介な医師・三隅俊斎に呼び止められた。三隅は仁をはめるために和宮にまで毒を盛るほどの執念深さだ(苦笑)今は自分も奥医師でと言い、あの時仁といっしょに見立て違いをしてひどく叱られた過去があるからこそ初心に帰れて奥医師になれたと嫌味。。仁は苦笑いしているがあまり覚えていないようだ。。仁が去るその背中を見て三隅は言った。「もうじきすべてを失いますよ。南方先生。」
・・色々な人間が色々な思惑を持ち日々生きている。仁はただまっすぐに医の事を、人の癒しを想い生きているのかもしれない。が、同じことを想っていても立場や思考でまったく違う考えになることもある。坂本龍馬はその渦の中を、独自の視点と思考でまとめあげようとしていたのだ。

龍馬は後藤象次郎と共に行動していた。無論、東修介も龍馬の護衛としてずっとついてきているが。龍馬は土佐の後藤と協力して大政奉還という最大の秘策を起こすために奔走していたのだ。<武力倒幕>で幕府を倒す以外の方法はないかと考えて、<政権を朝廷に返す、平和的な革命>という大政奉還の秘策を成し得るために。
土佐藩の山内容堂は幕府に恩を感じていて、薩長のような徳川に対する恨みはない。徳川を救う手立てを考えていたのだ。そこへ、自分の国(土佐)の脱藩浪人の男が近頃世の中心になって走り回っている。その男を利用してなんとか徳川を救えないか?と龍馬に近づいてきたわけだ。この出来事は龍馬にとっても利がある状況だった。大政奉還を実行にうつすための強力な原動力になる土佐を巻き込めるからだ。だが、それが実現に向かえば向かうほど薩長の連中から龍馬は警戒されることになるのだ。彼らは武力で確実に幕府をつぶしたい。

龍馬は突然薩摩藩士達に囲まれて、西郷隆盛と大久保一蔵(利通)の前に連れてこられた。薩摩も龍馬の行動に不信感を抱き始めていたのだ。「土佐のおはこは裏切りか!?」大久保はいきり立つ。「まあちっくと聞きとおせ。」龍馬は待ったの合図を両手でして話しはじめる。「これは壮大な茶番じゃき。戦で負けちゃあせんがやに、まつりごとを返せっちゅう話を、徳川260年が呑むとはおもうかえ?影で密勅をもろうて武力で倒幕をするっちゅうがわ、ちくと聞こえもようないろ?」だったら正面から建白し、それを蹴られるっていうのなら、「そりゃあ武力倒幕もしかたあるまいち、そうなるじゃろ?どうせ断るがじゃ、じきに挙兵したらええ。」龍馬の理屈に大久保は完全に無言になるが、逆に西郷は口を開いた。西郷には通用しなかった龍馬の理屈。「薩摩こつは薩摩が決めもす!」真っ直ぐに龍馬を見つめ西郷はきっぱりと言った。龍馬は戦を避けようとしているのが本心だと見抜いているのだ。「・・助けられたもんは助けられた恩を感じる。力でねじ伏せられたもんはねじ伏せられた恨みを忘れん。戦は戦を呼ぶ。どっちが新しい世を作りやすいと思うがぜよ西郷さん!」龍馬は言ってしまった。だから他の薩摩藩士も龍馬の本心がわかって裏切り者の怒声が上がる。龍馬は日本内の内乱が長びけば列強諸国につけこまれる隙になることも説いた。「倒幕は叶っても、属国にされればもともこもないろ!?頼むき!真の利がなんたるか・・」「人は!利だけで生きるわけではごあはん!人には、情ちゅうもんがごわす。己の裏をかいたもんを信じることはできもはん。ねじふせられんかったこつを、ありがたがるようにはできておりもはん!」西郷はそう言い放ち龍馬を見据えた。「わしの友人の南方仁は幕府と長州が戦っちゅうのをみて、どちらがどちらだかわからんちゅうたがじゃ!その意味をもういっぺん考えてくれんかのう!西郷さん!!」「・・・。」龍馬の声は薩摩藩士に取り押さえられ、その場を遠のいていった・・。

仁も予想外の産みの苦しみを味わうことになるとは・・。野風のお腹の赤子は逆子だった。出産が始まり、咲は陣痛の合間に赤子を回転させるが、横の状態で手だけがでてきてしまった状態に(泣)これでは・・でてこれない。
仁はこの事態に顔を青くする。「まだ手はあります。」野風や咲にそう言って、仁友堂の仲間達に決断を伝えたその内容は、母体だけでも助けるという苦渋の決断だった。佐分利裕輔は、なにがなんでも産みたいのでは!?と声を荒げるが、野風の体はすでに弱っていたのだ・・。仁友堂の麻酔をすれば赤子は死んでしまう、かといって麻酔なしで帝王切開をすれば、野風の体も取り返しのつかないことになりかねない。仁の決断は間違ってはいないだろう。だが!
何かを察した野風は麻酔道具を思い切りすべり落とした。「腹を切っておくんなんし!!このまま腹をかっさばき、子を取り出しておくんなんし!」野風は麻酔なしでも帝王切開を望んだのだ!<自分は籠の中の鳥だった。でもこの子は違う、自由に>「どうかあちきの夢を奪わないでおくんなんし!!」「帝王切開をいたしましょう。大丈夫です。女子は子供を守るためならどんな痛みでも耐えられまする!」野風の気迫と咲の願いで仁は決心する。麻酔なしの帝王切開を。

麻酔なしの手術・・こんな壮絶なシーンがまたあるなんて。喜一の母親の手術シーンも壮絶だったけど、これはまたすごかった。野風はあまりの痛みに呻くが、仁友堂のみんなが体をがっちりと支える(泣)見ててこっちまで力が入ってしまったよ(泣)
赤子を力ずくで取り出す仁。「もう少しです!がんばってください!」咲は必死に野風を励ます。取り出した赤子は泣かなかった・・。「そんな・・。」仁は涙目。咲はそんな赤子を逆さに吊るして持ち、「泣きなさい!」と尻を平手打ちにしたのだ!

赤子のうぶ声は上がった。野風も一時脈がなくなったが復活。すべてが成功したのだ。(あなたはね、私の恋敵を作るお方なのですよ。私としたことが大変な方を取り上げてしまいました。)咲は大事そうに赤子を抱きながら、未来で仁と出会うだろうこの子の子孫にお願いをする。仁を幸せにしてあげてくださいと・・。健気。
ルロンが安寿と命名したその赤ちゃんは目がクリクリして可愛かった。。野風もとても幸福な顔をしている。よかったね。
そして・・幕末の世も新しい流れが生まれた。徳川最後の将軍・慶喜は大政奉還を受け入れたのだ。「・・やったぜよ。先生。世があけたぜよ!!」龍馬は泣いた。

仁が勝海舟のところを尋ねると、勝は少し脱力していた。こんなことを実際にやってしまうということは、なんという奇跡なのだろう。このめぐり合わせには、さすがの勝も呆けてしまうしかないよね。「あいつやりやがったよ・・。徳川を終わらせやがった。これが大政奉還の建白の元となった龍馬の意見なんだけどよ、議員をすえるとか天下の人材を顧問にすえるとか、八つ目まではまあ、おいらや一翁さんが教えたもんをそっくり頂戴してやがってさ。でも最後のひとつ、九つ目にはとんと覚えがないんだよ。・・知恵をつけたのは先生かい?」九つ目には、皆が等しく医術を受けられる保険なるものを作ると記してあった。それは仁が前に龍馬に教えたものだった。仁は感動のあまり目頭を熱くさせる。自分の記したことが歴史の修正力にあがらって歴史に刻まれていた、龍馬の手によって。(歴史は変えられないわけじゃない!)仁は龍馬が助かる歴史を作ろうと望みを持つのだ。
だが、薩摩や長州は龍馬の独断ともいえる展開にはらわたを煮えくり返らせていた。幕府も龍馬の存在を疎んじることはあっても、感謝することなどない・・。大政奉還で無血革命を起こした龍馬。だが、皆の憎しみの対象をひとりで背負い込んでしまうことになる・・。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック