JIN -仁-#8
#8
「仁友堂」を立ち上げた南方仁。病院を自ら開業したのだ。まず、仁はペニシリン強化を図る。いままでのペニシリンを和紙に染みこませ、酸2割、アルカリ8割の触媒の水に漬ける。RF値(物質固有の移動距離)で和紙を上っていく仮定で、物質が分かれていくのだ。これにより、より純度の高いペニシリンができることになる。効力はいままでの30倍!これを大量生産させることができれば、もっとたくさんの病人達を助けることができる。だが・・これを実行するには400両かかるのだ。ヤマサ醤油当主・濱口は、以前ペニシリンのための援助をしたのは緒方洪庵がそれだけの器を持った人物だからこそ。とするどい目線を仁に向けた。「まずはあなた様の器がどんなものか、見せていただきたい。」「・・器。」
「まずは自分でなんとかしろってことですかね?」橘咲は帰宅して早々仁につぶやいた。「ていよく断られたっていうか・・。」仁はすでにふてくされているのか、そう返す。。そこへ、「器がありませぬ~!」と橘栄が間が悪く縁側にでてきた。仁は自分のことを言われたのかとへこんでしまうが。。実は父親形見の茶碗を売って金に換えたのは、橘恭太郎だった。「目の悪いものに、眼鏡を与えました・・。」そう言う恭太郎の表情は、どこか元気がない・・。
「龍馬さん!5000両も借りてきたんですか!?」仁は勝邸に訪れ、驚きの声を上げていた。「むふふふ。こん国の海軍を背負う海軍塾を作ろうちゅうがぜよ!そんくらいないと、話にならんがじゃき~。」団扇で扇ぎながら、ご満悦な坂本龍馬。。仁も少しくやしそうだ。。自分も新しいペニシリン作りたいけど資金が調達できないと嘆く。「先生は金策なんてできなくていいんだよ。人にはそれぞれ天分てものがあるんだからよ。」勝林太郎がやさしく仁に微笑んだ。仁は濱口に認めてもらうためにも、自分でなんとかしなくてはいけないと言うが考えは浮かばない。龍馬は、そんな時は吉原に行こうと言い始めてしまった。。「どこの女子もすばらしいけど、野風は吉原にしかいないのじゃき!」
龍馬に連れられ、龍馬と仁、恭太郎3人は夜道を提燈を照らして歩く。真っ暗の竹薮の中を、提燈の明かりだけがボッと光っている。そんな光景に、恭太郎は力なくつぶやいた。「器とは、闇に火を灯す、力のことかもしれませぬな。」仁も考えていた。いままでこの幕末で、医術だけに専念できたのは、それを不都合なくできていたのは、緒方洪庵という人物がいたおかげだったのだと。(俺にそんな器が、あるのだろうか・・?)
吉原に着くと、龍馬はもうノリノリである。。鈴屋に着くと、野風が髪を撫で付けながら近づく龍馬の脇をすり抜けて、仁の傍に寄り添った。「南方先生。実は、急ぎ診て頂きたい病人が。このままでは・・命を落としかねぬ様子で。玉屋の初音という女郎でありんす。」初音と聞いてギョッとしたのは恭太郎。その時!龍馬は妙な気配を感じて振り返った。傘をかぶった武士が数人こっちを見ていた。が、龍馬が気づいたので姿を消す。その者達に目を細め、睨みを利かす龍馬・・。
初音は客の子をはらんでしまったが、なかなか流れず中条流(子を流す専門の医者)を呼んで流したという。だが・・それから初音の具合は悪くなってしまったのだ・・。仁は敗血症と診断した。子を流した手術の時に細菌に感染して炎症を起こしているのだろう、このままでは死に至る。「ペニシリンを使いましょう。」初音は熱にうなされながら、「田之助さん・・。」とうわごとを言っていた。野風は言う。(誰の子かなんて特定はできない、でも初音はそう思いたいのでありんしょう・・)田之助は売れっ子女形役者らしい。本来役者は吉原には来てはいけないのだが・・。変装して何度も初音の所へ通っていたのだろうか?恭太郎はくやしそうに俯いている。仁はふと気づいた。初音の枕元には、眼鏡が置いてある。<この眼鏡は恭太郎さんが・・!>
ペニシリンを投与しても初音の具合は一行によくならない。菌の力が強いのだ・・。新しいペニシリンなら大丈夫だろうと確信していても、400両なんて大金がない。このままでは初音の命は・・。恭太郎は、田之助にご用立てしてもらうのはどうか?と意見を出す。初音を憎からず想っているのだろうし、文字どうりの千両役者だし。なるほど!!龍馬は仁の手を引っ張り、田之助の元へ急ぐ。恭太郎も、重い足取りで2人の後をついて行った。
田之助は妖しい雰囲気の色男だった。女装で紅をひいているので、余計威圧感がある。そんな大金あるわけないと言いながら、手元にある箱をひっくり返す。小判が大量にぶちまけられた!「おや、あった。」不敵に笑う田之助。仁は目を見張った・・。貸してください!という仁達にこの金は自分の血と肉だと言い張る田之助。<だからやるわけにはいかない!>恭太郎はそんな田之助に食ってかかるのだ。どうせ自分を見世物にして稼いだ泡銭ではないか!初音は田之助の名前だけをうわごとで呼んでいる・・。「哀れだと思わぬのか!?」「私だって身を売ってやってきたんだよ。血の吐くような思いで芸を磨き、やっと手にした。これはそういう金なんだよ。」田之助の眼光のするどさに恭太郎は射抜かれていた。「初音を助けたいならまず自分の身を切るのが筋だろうさ。旗本株でも売って出直してきやがれ!」田之助は場を完全に威圧していた。これが・・自分の芸を磨き続けている人間の力・・。武士である恭太郎だが、この場では完全に大敗していたのだ・・。3人はその場を後にするしかなかった。
「50両と、少しばかりありんす。」野風は仁に、この金を使って欲しいというのだ。初音に起こったことは、吉原の女郎すべてに起こりうること、「どうかお役立てくださんし。」だが。仁は気持ちだけ・・と断った。田之助の話を聞いたあとで、この金をどうして受け取れようか。「頭を冷やせ!先生!」龍馬が立ち上がった。ここでモタモタしていて初音が死んでしまっては元の子もないと叱咤する。「先生はもうペニシリンを作り始めるぜよ!」龍馬の号令で事態はとりあえず動きだした。だが・・依然解決したわけではない。金は足りないのだ・・。
龍馬が表にでると、また雨傘武士が数人いる・・。「わしか・・今度は。」刺客は自分を狙ってると確信する龍馬。だがふと、目についた看板で思いついた龍馬。「中条なら・・貯めこんでるかもしれんのう。」今は刺客にかまっておれん。
ペニシリン工場では、まためぐり合わせが悪く、暴動が起きそうになっていた。仁や医師達が必死に止めようとするが、働きづめで賃金も払われていなければ暴動も起きる。そこへ龍馬が大金を持って現れた。400両!!中条からペニシリンを質に7年間無利息で借りてきたのだ!「金なら支払う!端から順に並び!」さっそく小判をばら撒いて職人を安心させる龍馬。「すごいですね・・。坂本龍馬という人は。器が違う・・。」恭太郎はつぶやいていた。
それから不眠不休で、仁達はペニシリン製造に取り掛かる。その光景を見ながら山田純庵に言う恭太郎。「・・こうして作られていたのですね。皆が汗水を垂らし。」「この薬は南方先生が作りだし、緒方先生が命がけで守った、この世の宝でございますから。」「・・・。」恭太郎は言葉を発せなかった。(自分にはあるのか?そういうものが・・?)
初音に新しいペニシリンは効いた。治ったのだ。初音に一番に会いたいであろう恭太郎だったが・・彼は会わない。初音は、声で恭太郎だと察したが、同時に自分がうわ言で何か言っていたか?と咲に問うていた。そこで、自分がずっと田之助の名を呼んでいたことを知る・・。「申し訳ござりんせん・・。わちきは、人でなしでありんす。あんなにおやさしい人を傷つけ、女郎のくせに、嘘さえ突き通すこともできず・・。」歯を食いしばり初音は泣いた。「おのれの気持ちに、嘘はつけませぬ。せんないものと存じますよ。」咲は初音にやさしく言っていた。その言葉を聞いて、となりの部屋で野風がせつなそうに笑う・・。
すべてはとりあえず円満に解決したと思われた。だが、中条は謀ったのだ。7年ではなく7日!ペニシリンを貰い受けに来たと中条は押しかけてきてしまった!ほとんどヤクザ以下である。。龍馬は騙されてしまったのだ・・。だが、もう手はない。400両を今日中に中条に返さなければ、ペニシリンの権利はこの強欲爺さんのものとなってしまう!恭太郎はある決断をした。街中の群集の中で、田之助に土下座する恭太郎。<侍が役者に土下座をする>それは武士から見ればあってはならない屈辱なはずだ・・。だが恭太郎は頭を下げ続けたのだ・・。
ザッと襖が開き、仁達の前に姿を現した田之助。「ペニシリンはあんたらの血肉だっていうじゃないか!?田之助、命には命で応えるさ!」突然姿を現した田之助はそう言い、小判をばら撒き、「おとといきやがれ!」中条を追っ払う。「あの金は返さなくていいからね。貸すなんてせこい真似、きれえなんだよ。」まさに千両役者!華麗に決めてしまった。。なにがなんだかわからないが、仁と龍馬は、恭太郎が口ぞえしてくれたのだろうと察するのだった。ふたりは戻ってきた恭太郎に頭を下げる。
「・・それしかできなかっただけです。ボンクラの旗本にはそれしか・・。」「おまんのどこがボンクラじゃ!?」龍馬は恭太郎の活躍を褒め称えた。ペニシリンを守ったことは国を守ったのと同じだと。「・・私はあなたが嫌いでした。」恭太郎は龍馬に話しはじめたのだ。自分は護衛、龍馬は海軍、どちらも大切な役目だとわかっていても、世の中を動かすような大きなことをやっている龍馬を妬まずにはいられなかった。「けれど、こうして傍にいると器の違いを感じずにはおれず・・。」「どうしてそんなこと言うんですか?」仁が今度は言っていた。「恭太郎さんほどの護衛はどこにもいないのに?初めて会ったとき私を守って斬られてくれたじゃないですか?身元が知れない私を居候させてくれて、今日は私のすべてを身をきって守ってくれたじゃないですか!?恭太郎さんがいなければ、私はここで薬を作ることはできませんでしたよ?だから!恭太郎さんは私にとって最高の護衛なんです!」「・・・。」恭太郎は男泣きに泣いたのだ・・。(自分にも、できることはあった・・?)そして。ふたりの男のやさしさに泣く・・。
咲と野風も話をしていた。野風は、咲様はいずれ先生といっしょになるのか?と聞いていた。咲は仁には心に決めた人がいると笑う。「・・つらくありませぬか?」「私には、先生の医術がありますから。」咲はまた野風に笑う。野風はその時思ったのだ。(あちきには・・なにもありませんよ・・。先生。)
仁は再び濱口に頼みこんだ。「あなたの器は決して大きくないのでしょう。しかし、美しいんでしょうな・・。」濱口は仁の人柄と、仁のすべきことへの情熱を買って、出資することを誓ってくれた。
仁は、龍馬と咲と歩く帰り道に、再びあとをつけてくる刺客に出会う。龍馬は自分についてきていると仁に告げるが、仁はハッとしてしまうのだ!(歴史の針が進んだことで、龍馬暗殺も早まってしまうのではないか!?)「龍馬さん。気をつけてください。笑い事じゃないです!」仁の真面目すぎる表情に、龍馬は返す。「・・けんど、先生がおるがじゃろ?南方仁がおれば、坂本龍馬は死なん!」「・・助けますよ。」仁は心底に龍馬を思い、そう返していた。歴史の針は仁の予想を超えて進み始める。きわめて残酷な未来へと・・。
「仁友堂」を立ち上げた南方仁。病院を自ら開業したのだ。まず、仁はペニシリン強化を図る。いままでのペニシリンを和紙に染みこませ、酸2割、アルカリ8割の触媒の水に漬ける。RF値(物質固有の移動距離)で和紙を上っていく仮定で、物質が分かれていくのだ。これにより、より純度の高いペニシリンができることになる。効力はいままでの30倍!これを大量生産させることができれば、もっとたくさんの病人達を助けることができる。だが・・これを実行するには400両かかるのだ。ヤマサ醤油当主・濱口は、以前ペニシリンのための援助をしたのは緒方洪庵がそれだけの器を持った人物だからこそ。とするどい目線を仁に向けた。「まずはあなた様の器がどんなものか、見せていただきたい。」「・・器。」
「まずは自分でなんとかしろってことですかね?」橘咲は帰宅して早々仁につぶやいた。「ていよく断られたっていうか・・。」仁はすでにふてくされているのか、そう返す。。そこへ、「器がありませぬ~!」と橘栄が間が悪く縁側にでてきた。仁は自分のことを言われたのかとへこんでしまうが。。実は父親形見の茶碗を売って金に換えたのは、橘恭太郎だった。「目の悪いものに、眼鏡を与えました・・。」そう言う恭太郎の表情は、どこか元気がない・・。
「龍馬さん!5000両も借りてきたんですか!?」仁は勝邸に訪れ、驚きの声を上げていた。「むふふふ。こん国の海軍を背負う海軍塾を作ろうちゅうがぜよ!そんくらいないと、話にならんがじゃき~。」団扇で扇ぎながら、ご満悦な坂本龍馬。。仁も少しくやしそうだ。。自分も新しいペニシリン作りたいけど資金が調達できないと嘆く。「先生は金策なんてできなくていいんだよ。人にはそれぞれ天分てものがあるんだからよ。」勝林太郎がやさしく仁に微笑んだ。仁は濱口に認めてもらうためにも、自分でなんとかしなくてはいけないと言うが考えは浮かばない。龍馬は、そんな時は吉原に行こうと言い始めてしまった。。「どこの女子もすばらしいけど、野風は吉原にしかいないのじゃき!」
龍馬に連れられ、龍馬と仁、恭太郎3人は夜道を提燈を照らして歩く。真っ暗の竹薮の中を、提燈の明かりだけがボッと光っている。そんな光景に、恭太郎は力なくつぶやいた。「器とは、闇に火を灯す、力のことかもしれませぬな。」仁も考えていた。いままでこの幕末で、医術だけに専念できたのは、それを不都合なくできていたのは、緒方洪庵という人物がいたおかげだったのだと。(俺にそんな器が、あるのだろうか・・?)
吉原に着くと、龍馬はもうノリノリである。。鈴屋に着くと、野風が髪を撫で付けながら近づく龍馬の脇をすり抜けて、仁の傍に寄り添った。「南方先生。実は、急ぎ診て頂きたい病人が。このままでは・・命を落としかねぬ様子で。玉屋の初音という女郎でありんす。」初音と聞いてギョッとしたのは恭太郎。その時!龍馬は妙な気配を感じて振り返った。傘をかぶった武士が数人こっちを見ていた。が、龍馬が気づいたので姿を消す。その者達に目を細め、睨みを利かす龍馬・・。
初音は客の子をはらんでしまったが、なかなか流れず中条流(子を流す専門の医者)を呼んで流したという。だが・・それから初音の具合は悪くなってしまったのだ・・。仁は敗血症と診断した。子を流した手術の時に細菌に感染して炎症を起こしているのだろう、このままでは死に至る。「ペニシリンを使いましょう。」初音は熱にうなされながら、「田之助さん・・。」とうわごとを言っていた。野風は言う。(誰の子かなんて特定はできない、でも初音はそう思いたいのでありんしょう・・)田之助は売れっ子女形役者らしい。本来役者は吉原には来てはいけないのだが・・。変装して何度も初音の所へ通っていたのだろうか?恭太郎はくやしそうに俯いている。仁はふと気づいた。初音の枕元には、眼鏡が置いてある。<この眼鏡は恭太郎さんが・・!>
ペニシリンを投与しても初音の具合は一行によくならない。菌の力が強いのだ・・。新しいペニシリンなら大丈夫だろうと確信していても、400両なんて大金がない。このままでは初音の命は・・。恭太郎は、田之助にご用立てしてもらうのはどうか?と意見を出す。初音を憎からず想っているのだろうし、文字どうりの千両役者だし。なるほど!!龍馬は仁の手を引っ張り、田之助の元へ急ぐ。恭太郎も、重い足取りで2人の後をついて行った。
田之助は妖しい雰囲気の色男だった。女装で紅をひいているので、余計威圧感がある。そんな大金あるわけないと言いながら、手元にある箱をひっくり返す。小判が大量にぶちまけられた!「おや、あった。」不敵に笑う田之助。仁は目を見張った・・。貸してください!という仁達にこの金は自分の血と肉だと言い張る田之助。<だからやるわけにはいかない!>恭太郎はそんな田之助に食ってかかるのだ。どうせ自分を見世物にして稼いだ泡銭ではないか!初音は田之助の名前だけをうわごとで呼んでいる・・。「哀れだと思わぬのか!?」「私だって身を売ってやってきたんだよ。血の吐くような思いで芸を磨き、やっと手にした。これはそういう金なんだよ。」田之助の眼光のするどさに恭太郎は射抜かれていた。「初音を助けたいならまず自分の身を切るのが筋だろうさ。旗本株でも売って出直してきやがれ!」田之助は場を完全に威圧していた。これが・・自分の芸を磨き続けている人間の力・・。武士である恭太郎だが、この場では完全に大敗していたのだ・・。3人はその場を後にするしかなかった。
「50両と、少しばかりありんす。」野風は仁に、この金を使って欲しいというのだ。初音に起こったことは、吉原の女郎すべてに起こりうること、「どうかお役立てくださんし。」だが。仁は気持ちだけ・・と断った。田之助の話を聞いたあとで、この金をどうして受け取れようか。「頭を冷やせ!先生!」龍馬が立ち上がった。ここでモタモタしていて初音が死んでしまっては元の子もないと叱咤する。「先生はもうペニシリンを作り始めるぜよ!」龍馬の号令で事態はとりあえず動きだした。だが・・依然解決したわけではない。金は足りないのだ・・。
龍馬が表にでると、また雨傘武士が数人いる・・。「わしか・・今度は。」刺客は自分を狙ってると確信する龍馬。だがふと、目についた看板で思いついた龍馬。「中条なら・・貯めこんでるかもしれんのう。」今は刺客にかまっておれん。
ペニシリン工場では、まためぐり合わせが悪く、暴動が起きそうになっていた。仁や医師達が必死に止めようとするが、働きづめで賃金も払われていなければ暴動も起きる。そこへ龍馬が大金を持って現れた。400両!!中条からペニシリンを質に7年間無利息で借りてきたのだ!「金なら支払う!端から順に並び!」さっそく小判をばら撒いて職人を安心させる龍馬。「すごいですね・・。坂本龍馬という人は。器が違う・・。」恭太郎はつぶやいていた。
それから不眠不休で、仁達はペニシリン製造に取り掛かる。その光景を見ながら山田純庵に言う恭太郎。「・・こうして作られていたのですね。皆が汗水を垂らし。」「この薬は南方先生が作りだし、緒方先生が命がけで守った、この世の宝でございますから。」「・・・。」恭太郎は言葉を発せなかった。(自分にはあるのか?そういうものが・・?)
初音に新しいペニシリンは効いた。治ったのだ。初音に一番に会いたいであろう恭太郎だったが・・彼は会わない。初音は、声で恭太郎だと察したが、同時に自分がうわ言で何か言っていたか?と咲に問うていた。そこで、自分がずっと田之助の名を呼んでいたことを知る・・。「申し訳ござりんせん・・。わちきは、人でなしでありんす。あんなにおやさしい人を傷つけ、女郎のくせに、嘘さえ突き通すこともできず・・。」歯を食いしばり初音は泣いた。「おのれの気持ちに、嘘はつけませぬ。せんないものと存じますよ。」咲は初音にやさしく言っていた。その言葉を聞いて、となりの部屋で野風がせつなそうに笑う・・。
すべてはとりあえず円満に解決したと思われた。だが、中条は謀ったのだ。7年ではなく7日!ペニシリンを貰い受けに来たと中条は押しかけてきてしまった!ほとんどヤクザ以下である。。龍馬は騙されてしまったのだ・・。だが、もう手はない。400両を今日中に中条に返さなければ、ペニシリンの権利はこの強欲爺さんのものとなってしまう!恭太郎はある決断をした。街中の群集の中で、田之助に土下座する恭太郎。<侍が役者に土下座をする>それは武士から見ればあってはならない屈辱なはずだ・・。だが恭太郎は頭を下げ続けたのだ・・。
ザッと襖が開き、仁達の前に姿を現した田之助。「ペニシリンはあんたらの血肉だっていうじゃないか!?田之助、命には命で応えるさ!」突然姿を現した田之助はそう言い、小判をばら撒き、「おとといきやがれ!」中条を追っ払う。「あの金は返さなくていいからね。貸すなんてせこい真似、きれえなんだよ。」まさに千両役者!華麗に決めてしまった。。なにがなんだかわからないが、仁と龍馬は、恭太郎が口ぞえしてくれたのだろうと察するのだった。ふたりは戻ってきた恭太郎に頭を下げる。
「・・それしかできなかっただけです。ボンクラの旗本にはそれしか・・。」「おまんのどこがボンクラじゃ!?」龍馬は恭太郎の活躍を褒め称えた。ペニシリンを守ったことは国を守ったのと同じだと。「・・私はあなたが嫌いでした。」恭太郎は龍馬に話しはじめたのだ。自分は護衛、龍馬は海軍、どちらも大切な役目だとわかっていても、世の中を動かすような大きなことをやっている龍馬を妬まずにはいられなかった。「けれど、こうして傍にいると器の違いを感じずにはおれず・・。」「どうしてそんなこと言うんですか?」仁が今度は言っていた。「恭太郎さんほどの護衛はどこにもいないのに?初めて会ったとき私を守って斬られてくれたじゃないですか?身元が知れない私を居候させてくれて、今日は私のすべてを身をきって守ってくれたじゃないですか!?恭太郎さんがいなければ、私はここで薬を作ることはできませんでしたよ?だから!恭太郎さんは私にとって最高の護衛なんです!」「・・・。」恭太郎は男泣きに泣いたのだ・・。(自分にも、できることはあった・・?)そして。ふたりの男のやさしさに泣く・・。
咲と野風も話をしていた。野風は、咲様はいずれ先生といっしょになるのか?と聞いていた。咲は仁には心に決めた人がいると笑う。「・・つらくありませぬか?」「私には、先生の医術がありますから。」咲はまた野風に笑う。野風はその時思ったのだ。(あちきには・・なにもありませんよ・・。先生。)
仁は再び濱口に頼みこんだ。「あなたの器は決して大きくないのでしょう。しかし、美しいんでしょうな・・。」濱口は仁の人柄と、仁のすべきことへの情熱を買って、出資することを誓ってくれた。
仁は、龍馬と咲と歩く帰り道に、再びあとをつけてくる刺客に出会う。龍馬は自分についてきていると仁に告げるが、仁はハッとしてしまうのだ!(歴史の針が進んだことで、龍馬暗殺も早まってしまうのではないか!?)「龍馬さん。気をつけてください。笑い事じゃないです!」仁の真面目すぎる表情に、龍馬は返す。「・・けんど、先生がおるがじゃろ?南方仁がおれば、坂本龍馬は死なん!」「・・助けますよ。」仁は心底に龍馬を思い、そう返していた。歴史の針は仁の予想を超えて進み始める。きわめて残酷な未来へと・・。
この記事へのコメント
やっぱり「仁」は面白いですね~
これだけは予約しといたんですけど、普通に亀田vs内藤の試合が録画されてました・・・。
おお!!おかえりなさい(笑)なんか気づくの少し遅れてしまいましたね、すいません。
エッフェル塔ですか!フランスですね、パリですか!?チュイルリー公園とかって噴水綺麗ですか!?ノートルダム大聖堂は壮大ですか!?・・・ははは。なんか興奮してしまう。実家がフランスなんですか?それはすばらしいですね!!うらやましすぎます(^^)/
そんなんですよ。ボクシングのドリームマッチ的なものが放送されて、今回時間がずれてしまったんですよね(苦笑)
そうなんです。フランスのヴェルサイユで生まれて、パリで育ちました。
フランスは何処もとっても綺麗ですよ~。
特に今はクリスマスイルミネーションで、本当に綺麗です。
ヤスキさんも、ぜひ行ってみてくださいね!
そんなわけで、向こう生まれのわたしは自動的にカトリック(フランスはカトリックの国なので)
ちゃんと日曜日にノートルダムでミサ受けてきました
日本ではちっとも教会に行ってないので、一年に一回くらいはね(笑)
いや~。パイプオルガンの音にちょっと鳥肌。
本当に楽しい、楽しすぎる休暇でした。
また来年までガンバロ