「リミット刑事の現場2」まとめ後編

「リミット刑事の現場2」まとめ後編
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http://www.nhk.or.jp/nagoya/keiji2/
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梅木は、霧立ち込める刑務所の前でひとりの男が出てくるのを待ち構えていた。その男は今日出所してくる。18年前、自分の恋人を殺した男だ・・。「・・・。」梅木の前に男が姿を現す。それは、東野刑事課長だった。「あなたが殺そうとしてる男なら、もうここにはいませんよ。」「・・なに?」「黒川真治は昨日出所しました。」「奴をどこに隠した?」「もう名古屋には戻ってくるなと言ってあります。二度とあなたの目にふれないように。」「てめえ!」梅木は東野の胸倉を掴む。「いいかげん目を覚ましてくださいよ!梅さん、あなた刑事なんですよ?あなたを犯罪者にしたくないんです!」「おまえと話してる暇はない。俺はひとりでも探す。」梅木はしかめ面でその場を歩き去った。と、前方から一台のパトカーがゆっくりと近づいてくる。梅木がその脇を通ろうとすると、パトカーから刑事ふたりがでてきて、梅木を取り押さえようとした。梅木はそれを簡単に振りほどき、無言でスタスタと歩みを止めない。が、ふたりの同僚も今度は本気で梅木にかかっていく。取っ組み合いをしている梅木を、少し離れた場所で切なそうに東野は目を細め、眺めていた。
署に連行されてきた梅木だったが、署に帰ってきてからも暴れる。「何が復讐だ!?少しは俺達のこと考えろ!?」太宰満警部に一撃を食らわされ膝をつく梅木。とうとう取調室に連れて行かれてしまった・・。その様子に署内はどよめく。二度とこういう真似はしないと誓約書を書いてください。と東野。その机の紙を梅木は弾き飛ばした。「・・あなたの婚約者が殺されたのは私のせいだと思っているんでしょ?たしかに18年前、黒川の部屋に事情聴取に行った時、彼女を救おうと部屋に飛び込もうとしたあなたを、令状とるべきだと止めました。・・正直、今でも考えます・・。だからいままで色々無茶やったあなたを、かばってきた。いつかは俺の尊敬してた梅さんに戻ってくれると信じて。」「・・・」梅木が顔をそらす。「でももう、これ以上無理だ。あなたには愛想が尽きた・・。」東野は部屋を出て行き、署内のみんなに梅木をしばらく軟禁し反省を促している、勝手に会うことは許さん!と説明した。そんないきさつを啓吾は、ぼんやりと目の端にいれていた。啓吾は青い顔でデスクに座っている。(ごめんなさい)という置手紙を残し朝、茉莉亜はいなかった・・。出て行ってしまったのだ。
筒井薫が取調室に入ってきて梅木の傷の手当てをし始めた。無言の梅木に言う。「梅さん。・・ちょっと考えたんだけどさ。もし私が死んだ彼女だったら、なんて言うかなって思って。・・本当に復讐なんて、して欲しいのかな?」梅木の表情が一瞬曇る。「私は彼女じゃないから、そんなこと考えてもしょうがないんだけどね。」笑いながら梅木の顔に絆創膏を張る薫。実は薫はいつも、梅木のことを心配しているのだ・・。
携帯を見つめてボッーとしている啓吾。茉莉亜からの連絡は、ない・・。そこへ薫が分厚い紙袋を持ってきて啓吾に渡した。「梅さんが話あるんだって。」薫のはからいで啓吾は、梅木と隣の部屋の電話から話すことになる。「・・加藤です。」「資料見たか!?」「見ました。」「黒川真治を探してくれ。そこに書いてある住所のどっかにいるはずだ。」「もう復讐なんてどうだっていいじゃないですか!?黒川って奴も、罪をちゃんと反省して模範囚だったみたいじゃないですか?」「・・おまえの大好きな罪を憎んで人を憎まずってやつか?」苦笑して受話器をにぎる梅木。「だったらなんですか?」「なあ?そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんだよ。奴は必ずやる!だから、探してくれ!」「・・もうやめてもらえませんか?あなたのせいでどれだけ迷惑かかってるかわかってるんですか?茉莉亜だってあんなこと言われなきゃ・・」「彼女と何かあったのか?」「これ以上巻き込まないでください。」啓吾は受話器を置いた。(これ以上、あなたの言動や行動に、振り回されるのはまっぴらだ)どこまでも自分の復讐に人を巻き込もうとする梅木に腹を立てる啓吾。茉莉亜だって、あんなことを梅木が言わなければ出て行くことはなかっただろう。どれだけ人の心に土足で踏み入れば気が済むんだ!?デスクに戻ってきた啓吾は眉間にしわを寄せて険しい顔をするしかない。
だが・・これから起こることを、目の当たりにする啓吾は気づくのだ。梅木が、ただ復讐のためだけに動こうとしていたわけではなかったという事を。
啓吾の携帯が鳴る。茉莉亜からだ。とりあえず安堵のため息をして啓吾は携帯にでた。「啓吾・・。ごめん。突然でていったりして。」「どこにいるんだよ?」「お願いがあるの。彼をひき逃げした犯人が、どこの刑務所に入ってるのか、調べてもらえないかな?」「・・ごめん。規則で教えられないんだ、ごめんね。なあ茉莉亜。帰ってこいよ、前の彼氏が忘れられないのはしょうがないことだし、俺は全然気にしてないから。頼むよ。」「ごめん・・。今は無理なの。」「なあ、わかってるのか?お腹に俺達の子供もいるんだよ?」「・・ごめんね啓吾。自分でも混乱してるの。どうしたいのか、よくわからないの。だから・・少し時間くれないかな?」「あのさ!」電話は切れていた・・。茉莉亜は死んだ恋人の墓の前でしゃがみこんでいた。墓には白いチューリップがたむけてある。茉莉亜は、本当に愛していた恋人が死に、その死を自分の中で消化しきれない内に啓吾と知り合う。啓吾のやさしさに心が癒され、しだいに心を開いていった。だが・・梅木の現実的な問いかけに、自分の心と向き合うことを思い出してしまった。そう・・自分はまだ、死んだ恋人を忘れられていない?ザッと足音がして茉莉亜は振り向く。「白いチューリップ。花言葉は、失われた愛。」たむけの花束を持った青年風の男が言った。涼しげな顔が、少しさびしそうに見える。
中央署ではひとつの事件が通報されていた。民家が燃えて、ひとりの被害者がでたのだ。伊坂聡警部補の報告では、その男は黒川しょうご67歳。火元は枕元の灰皿で、当時泥酔状態だったらしい。どうやら事件性はないと、東野も太宰も納得するが、「すいません。ちょっと待ってください。」啓吾はデスクに戻り梅木からの資料を見始めた。!!(やはり、黒川真治の実父だ!)黒川真治との関係性を調べるべきだ!とすぐに報告するが、「偶然かもしれないし、黒川はもう名古屋にいない。事件性を疑うなら周辺の聞き込みを続けろ。」と東野に一喝されてしまう。<なぜ有効な情報があるのに、それを考慮してもらえないのか?>ジレンマに囚われる啓吾。東野の言っていることは基本に則って正しいが、梅木の電話口の言葉を思い出す。(悠長なこと言ってる場合じゃない、奴は必ずやる!)その言葉に引っかかりを覚えた啓吾は、資料を基に、黒川真治の母親・佳代の元へ向かった。そして・・啓吾は見てしまう。風呂場満杯の水に沈んでいた、佳代の死体を・・。佳代は殺害されたのだ。
中央署では捜査本部が立ち上げられる。黒川しょうご、そして黒川佳代が相次いで死亡した。指名手配はもちろん、黒川真治!啓吾は東野に頼み込んだ。<梅木を捜査に戻して欲しい、黒川真治を一番知っているのは梅木さんです!>東野はたしかに思う所があったのだろう、その啓吾の申し出を許可した。その代わり、梅木の銃携帯は認めないという条件付で。だが、梅木には十分だった。啓吾と梅木は黒川真治逮捕に向け動き出す!啓吾自身も梅木に対する不信感は随分となくなっていたのだ。たしかに、梅木はわかっていた。自分の恋人を殺した男のその正体。それが悪魔だということを・・。「この殺しはまだまだ終わらない。これからも続くぞ。酒癖が悪く虐待をし続けた父親。その奴を置いてさっさとよその男の所に逃げ出した母親。そういう奴らが自分を犯罪者にしたと思い込んでいる。そういう奴、皆殺しにする気だ!」
梅木と啓吾は黒川の元恋人の元へと急いだ。彼女はもう結婚して子供もいる。黒川は、この女にも裏切られたと梅木は言う。ふたりは彼女の無事な姿をみることができ安心した。が、部屋に案内され、彼女を説得している時に部屋の電話が鳴る。その電話の主は黒川だった!
「もしかして・・黒川さん?」「覚えてくれてたんだ?あれ、それとももう、警察が来てる?なんだ図星か?でもよくわかったね、その刑事さん。ちょっと代わってくれる?」梅木はその展開に満面の笑みを浮かべた。電話を代わる。「俺だよぉ。黒川。」「・・もしかして梅さん?」「ああ。」「おひさしぶりですね。出所の時は会えなくてさみしかったですよ。この頃思うんですよ、この世で、一番僕のことわかってるのは梅さん、あなただって。」ニヤリと笑う梅木。「だってそうでしょ?お互いこの18年間、復讐のことばっかり考えて生きてきた、似た者同士なんだから。・・ねえ?あなたなら、なんで両親殺したかわかるでしょ?」「ああ。二人とも、おまえを愛してくれなかった。だろ?」梅木はずっと笑っていた。その形相を不審がる啓吾。(人は因縁の相手に出会うと、こうも笑顔になるのか?)「さすがですね、梅木さん。」電話の向こうの黒川の声も穏やかで笑っているのだ。黒川は梅木に教える。その女を直接殺してもおもしろくもなんともないと。「自分の命より大切な人間がいるでしょ?その女には。」ターゲットは息子!?「じゃあそろそろ切りますよ、逆探されるから。」黒川が電話を切ったあと、梅木の顔はもはや笑ってはいなかった。<奴は家庭では虐待を受け続け、学校や職場ではいじめを受け続けた。信じたいと思っていた人間には裏切られ続けた。奴は憎しみの塊になっている。これは黒川の復讐だ!>中央署は一丸となって男の子の捜索に望む!
黒川はなぜ、梅木の恋人を殺害したのか?黒川は、同じマンションに住んでいた梅木の恋人をストーカーしていた。それは恋愛感情の暴走からではない。<ただ幸せそうだった>だから殺害したのだ・・。黒川を捕まえないかぎり、いくらでも罪のない人達への殺人が行われるだろう・・。男の子の身柄は衰弱していたが、なんとか無事に保護できた。署内は歓声に沸くが、梅木はとても楽観はできなかった。少し衰弱した表情で、また水をいれたコップにコインを落としている。そんな梅木に啓吾が話しかけた。
「前から気になってたんですけど、なんですか?これ。」啓吾もコインをコップに入れた。今はまだ溢れるほど水は満たされていない。「ああ・・。昔、トモヨと遊んでいたゲームだよ。」「トモヨさんてあの・・亡くなった?」「ああ。」映画でやっていたらしいこのゲームを真似して、ふたりで遊んでいたのだ。水が溢れた方が負け。コーヒー代を賭けて遊んでいた、いつも自分が負けていた・・。遠くを見る目がいつになくやさしい梅木。「どんな・・人だったんですか?」「うん。おまえの彼女・・茉莉亜さんによく似てたんだ。いや、ただ、そう思えるだけかも知れない。」「・・どういうことですか?」「人は・・忘れる。」梅木はコインを落とした。「悲しいことや辛いことはありありといつまでも覚えているのに、トモヨと過ごした楽しい思い出は、どんどん消えていくんだ。・・今の俺に残っているのは、トモヨを殺された無念と黒川への憎しみだけだ・・。」またコインを落とす。「こんなことでもやってないと、トモヨのことをみんな忘れてしまいそうでなあ・・。」梅木の顔がとてつもなく悲しく見えた啓吾。そして。自分も向き合わなくてはならない、茉莉亜と・・。
啓吾と茉莉亜はひさしぶりに会う。そこは墓地だった。茉莉亜の元恋人が眠る場所・・。「ほっした。電話もらえて。」「・・・。」しばらくふたりで歩き、茉莉亜は言った。「ねえ、結婚、辞めない?」「・・何、言ってるんだよ?」「私、啓吾のこと幸せにできない!こんな気持ちのままじゃいっしょにいられない。どうしても比べちゃうの。彼と啓吾を・・。」茉莉亜の肩に置いた手を、思わず離してしまう啓吾。もう・・茉莉亜は決断していたのだ、考える余地はない・・。子供も自分ひとりで育てるという。「ごめん・・啓吾。ごめんね・・。」茉莉亜が去ってしまったあとも、呆然とするしかない啓吾。その背中はとてつもなく悲しかった・・。
ひとりいる梅木に太宰が声をかけた。「黒川見つけたらどうすんだよ?復讐か!?警察がちょっとミスすりゃグタグタ言われる中で、みんな必死になって自分の仕事がんばってんだよ!その努力を無駄にする覚悟があるのか!?てめえ!」「・・・」梅木は無言で署を出て行く。いつの間にか、そのあとを追う啓吾がいた。ふたりは大切な人を失った。その失い方は違うが、悲しみは同じだ。少なくとも、これ以上奴をほっとくわけにはいかない!(悲しいから、さびしいから人間の命を粗末にする、もて遊ぶ、そんな黒川をこれ以上野放しにしておくわけにはいかないのだ)
黒川の元いた職場に足を運ぶ啓吾と梅木。ここにも黒川は姿を現す可能性がある。!!その時、啓吾の携帯が鳴った。茉莉亜からだ。だが、電話に出ると男の声。「あんた茉莉亜さんと付き合ってる人?驚いたよ、まさか中央署の人で梅木さんと・・。」「誰だ!おまえ!!」「振り返ればわかりますよ。」!?そこには黒川が立っていた。茉莉亜に白いチューリップの花言葉を言ったあの男。だが、今はその涼しげな顔を卑屈な笑みで歪めていた。ずっと様子をうかがっていたのだろう、あの時から。寂しげに墓参りする茉莉亜のことを見た時から。そして見ていたのだろう、啓吾と別れ話をする所も。黒川は人間の心を覗き見し、観察して楽しんでいたのだろうか?人間の愛が、どんなものかを・・。
怒り狂った啓吾は銃を引き抜き、構えた!嫌らしく笑う黒川。「いいけど。そんなことしたら大切な茉莉亜さんに一生会えなくなっちゃうよ?」捕まえても自供させる前に、茉莉亜は死んでしまうかもしれない・・。カードを握られてしまったことに梅木は啓吾を必死に抑えながら、その顔を歪めるしかなかった・・。

最終回
人に対し非情な考えを持つ梅木拳。人を信じていたい加藤啓吾。ふたりの刑事は、その考え方の違いから捜査でも幾度となくぶつかり合ってきた。梅木の非情な考え方に、啓吾は納得がいかなかった。しかし。梅木のその非情さの裏には、警察の現場の限界を超越した理にかなった面も多々あった。それは達観者としての目を持つ梅木の、心の揺れがない梅木ゆえのやり方の証だったのかもしれない。だが、その梅木は復讐の心に囚われ続け生きていた。自分の恋人を殺した男・黒川真治への復讐。その男が出所し、再び梅木の目の前に現れた時、今度は啓吾の恋人を人質として、ふたりをあざけ笑うように挑発する黒川。人を信じていたはずの啓吾の心は崩壊し、銃口を黒川に向け怒り狂う。それを梅木が押さえ込むように止めていた。今、ここで黒川を撃ち殺してしまえば逆に茉莉亜の命が危ない。そして・・この男を捕まえても、茉莉亜の命が衰弱するまでに自白に追い込めるかわからない。梅木は黒川の人格を承知している分、この状況の危うさに尻込みする・・。
愛する人を失って復讐と憎しみに心を奪われた梅木。愛する人を奪われそうになり非情な憎しみをあらわにした啓吾。愛を一度ももらったことのない故に人に憎しみと復讐を企てる黒川。愛のすぐ裏側は、憎しみなのかもしれない・・。
「要求はなんだ!?どうすれば茉莉亜さんを殺さないですむ!?」梅木の問いに薄ら笑いを浮かべ黒川は答えた。「茉莉亜さんの彼、ひき逃げした奴、探してくれます?」「そんなことしてどうするんだよ!?」啓吾の怒声に、「もちろん。茉莉亜さんの願いを叶えてあげるんだよ。見ものだよ、茉莉亜さんがどんな風に憎しみをぶつけるか。」黒川は茉莉亜の携帯を地面に置き、朝8時までに探しておくように要求、そして立ち去ろうと背を向けた。「おい!!待て止まれ!」啓吾はすぐさま黒川のあとを追うが、梅木は啓吾を殴ってでも止めた。「これであいつは明日まで、何もしねえ!!」啓吾は口を血で真っ赤に染めながら、梅木に掴みかかる。「あんたに!あんたにそんなことなんでわかるんだよ!!」「俺は!トモヨを殺されてるからだ!いいか?おまえに、俺と同じ想いはさせない!!」梅木は梅木による根拠を、啓吾に言って聞かせるしかなかったのだ・・。
トモヨと茉莉亜の死んだ恋人との墓は同じ墓地にあった。茉莉亜はそこで、出所しトモヨの墓参りに来ていた黒川と出会う。黒川は過去、トモヨに惹かれ好意を抱くが、トモヨには愛する恋人がいた。それが梅木!愛を自分に見せ付けたトモヨを殺害した黒川は、今度はその墓参りに出会った茉莉亜に興味を抱く。その茉莉亜の姿は・・トモヨに似ていたのだ。
署では梅木と啓吾の判断が問題視されていた。なぜ容疑者と取引などをして、その場で逮捕しなかったのか?本庁のキャリアは黒川の要求など呑めるわけがない、ひき逃げしたといっても、もう刑期は終えて、ただの民間人なんだぞ!と怒声を上げた。もっともな意見だが、東野刑事課長は「私に考えがあります。」とひとまず場を収めた。黒川との因縁と啓吾の事情を含め、本庁の人間とは違う、情が働いたのだ。
啓吾はそのあとも心の動揺が抑えられない。梅木に気持ちをぶつける!「やっぱりあの時、黒川を逃がしたのは間違いでした!どんなことをしてでも居場所を吐かせるべきだった!」「拷問したって吐くような奴じゃない。だいいち、そんなことできないだろう!」「あれ?どうしたんですか?いつもの梅木さんらしくないんじゃないですか!?」「奴をとっ捕まえたにしても居場所を吐かなかったらどうするつもりなんだ?茉莉亜さんは見殺しだぞ?残るのはなんだ!?警察の面子だけじゃねえか!」「黒川を吐かせる自信がないんでしょ!?なんで、自分の力を信じないんですか?だったら警察なんて辞めちゃえばいいじゃないですか!?」「いいか!?いいか!!犯人の確保が大事なのか!?被害者の命が大事なのか!?どっちだ!?」「話を逸らさないでもらえませんか!?」「いいか!!奴は追い続ければいつか必ず捕まえることができる。だがもし!被害者の命が奪われたら、取り返しがつかないことになんだぞ!!」「教えてくださいよ!!その確証を教えてくださいよ!?」梅木は一瞬顔をそらし、そして話し始めた。トモヨと茉莉亜の姿が似ていること、だから茉莉亜を自分のものにすることで18年前の想いを遂げることになること、だから茉莉亜に憎しみの心を植え付けて自分と同じ世界に引き込むこと、「それが叶うまで奴は絶対に、殺さない!」
東野の案で、茉莉亜の恋人をひき逃げした男・大石の資料が各刑事に配られる。だが、東野がその男の代わりとして黒川と会うというシナリオに梅木は待ったをかけた。「おい?それで黒川を逮捕するつもりかい?黒川はきっと見破る。」「・・全力を尽くす!」自分だってもう犠牲者は出したくない!東野は梅木を説き伏せていた。東野自身も、過去に梅木の恋人を死なせてしまったことを、ずっと心にやんでいたのだ・・。
「このまま黙ってみてられるかよ!」ずっとデスクに座り込んでいた啓吾だったが突然立ち上がって叫んでいた。その形相はあきらかに我を失っている。すかさず東野が止めに入り、太宰満警部は、「関係者がいる場合は捜査からはずすのが常識だろうが!」と怒鳴り散らした。「・・納得できません!」それでも啓吾は、独自に黒川捜索に乗り出そうとする。朝の8時までの時間、じっと待ってることなんて今の啓吾にはできないのだ。茉莉亜を無事に助け出して、もっとちゃんと話合わなければならないことがたくさんある!だが、太宰は啓吾を掴み放り投げ、啓吾は仲間の刑事達に一室に閉じ込められてしまった・・。梅木は啓吾の気持ちを察したのか、デスクに座り込んで顔をしかめる。だが決めた。やはり直接、大石に会い、この交渉に立ち会ってもらうしかない。
梅木は独断で大石に会いにいく。が・・大石は暗い表情を浮かべ、梅木の隙をついて逃げ出してしまった。これで直接大石の手を借りることはできなくなってしまう。梅木は不安だったのだ。もし、黒川が東野を大石じゃないと見破ったら、その瞬間にも茉莉亜の命が奪われる可能性は十分にあると・・。そして、朝8時。黒川からの電話に茉莉亜の携帯が鳴った・・。
待ち合わせの場所に東野は大石に扮し、立っていた。町中にはたくさんの刑事がそれぞれの場所で待機している。通話の音声は各自のイヤホンに入るようになっていた。これで即座に状況をそれぞれが把握できる。一人立つ東野の元に黒川から電話が入った。「・・もしもし。」「ねえ?あんた誰?どうせ中央署の刑事でしょ?梅さんと加藤君に伝えといてくれる?本物のひき逃げ犯さんとは会えたからもういいって。こんなことだろうと思ってさ、あの事件の担当弁護士を調べて連絡先教えてもらったんだ。じゃあ。あんた達の相手なんてしてる暇ないんで。約束破ったから茉莉亜さんの命は保障できないって。」電話の黒川は余裕の笑みを含んでいた・・。車で待機していた伊坂聡警部補は目をつぶり、梅木はガクッと膝を落とす。「なんて・・こった・・。」
梅木と筒井薫警部補が啓吾のいる一室に入ってきた。机や椅子は四方にひっくり返り、啓吾自身は部屋の壁にもたれて座っていた・・。「・・どうなったんですか?」「・・・。」梅木は無言で机を元に戻す。「黒川とは・・接触できなかった。」薫の言葉に、「じゃあ・・じゃあ茉莉亜はどうなるんですか?」梅木は顔をそらす。「殺されるのを待つだけですか?」ノロノロと啓吾は立ち上がり梅木の胸倉を掴んだ。「何とか言えよ!おまえが大口叩いたんだろうが!?ええ!!それがこの様かよ!?どうしてくれんだよ!おい!おい!!」「信じて!あたし達を!」薫の叫び声で啓吾はへたり込むが、うつろな顔で言っていた。「茉莉亜に何かあったら、黒川、俺が殺しますから・・。黒川殺して・・あんたも殺す!」梅木を睨んだ啓吾の目は涙で充血し、獣のような鋭さを放っていた・・。
署の廊下で薫は梅木に尋ねる。「加藤君のこと、18年前の自分みたいだって思ってるんじゃないの?」「・・よく覚えてないんだ。」梅木は窓の方を向いてどこか遠くを見ている。薫はその梅木の背中を見ていた。「あいつが茉莉亜さんを愛しているほど、俺は彼女を愛してたのかな?・・とにかく彼女が殺されて以来、憎むこと意外何にも感じなくなった・・。黒川を憎み、黒川を生んだ社会を憎んだ、俺の痛みをわからない奴を憎み、自分のことしか考えない上司を憎んだ、警察という組織を憎んだ、で・・神様を憎んだ・・。」「もう復讐なんて止めて!」たまらず薫は梅木の背中を掴み、そう言うしかなかった・・。
大石が無事身柄を保護された。状況を聞く東野達。だが、ずっと目隠しをされてわからないと言う。「なあ?監禁されてた女性がいたろ?無事だったか!?」梅木の問いに、自分が解放されるまでは無事だったはずと言う大石。と!黒川からの電話が鳴る。今度は啓吾を出してくれと言う黒川。茉莉亜と直接話をさせるつもりらしい。梅木は啓吾のいる部屋に行き、啓吾に茉莉亜の携帯を渡した。「・・啓吾?ごめんね心配かけて。私・・もう迷わない。これからは未来だけ考えて、生きていきたい。」それを聞き、啓吾の目に涙が伝う。黒川は電話を代わり、今度は梅木に出るよう言ってきた。刑事全員がイヤホンをつけてこれらの会話は全員聞いている。「梅さん?今から18年前、あんたの恋人を殺した場面を再現してあげるよ?」黒川は笑っていた。黒川は、トモヨが死ぬ間際に自分に言った言葉を、茉莉亜に読ませて梅木に聞かせてから殺すと言う・・。「なんでそんなことするか怒ってるでしょ?それはね、この女が愛の力みたいの信じてるからだよ!だから俺が、愛なんか憎しみに勝てないってことを、教えてやるよ!」黒川は茉莉亜と大石を引き合わせた。茉莉亜がどう憎しみを大石にぶつけるか見たかったのだ。恨みの言葉を言う茉莉亜だったが・・途中で気づく。大石も、事件のことで自分以上に苦しみ、罰を受けたことを。そして、自分の考えが間違っていたこと、そして自分には啓吾がいることを。またしても自分より啓吾を選んだ茉莉亜に、黒川はその憎しみを茉莉亜に向けたのだ・・。
逆探知が終わるよりも先に梅木は気づく。18年前の再現をするというのなら、黒川と茉莉亜がいる場所は、トモヨを殺害したマンションの部屋!急ぎ車を飛ばすふたり。その間もトモヨの梅木に対する気持ちが茉莉亜の言葉として読まれ続けていた。その言葉は、梅木を尊敬し、信頼し、愛していることが十分に伝わる内容だった。それを聞きながら車の助手席で梅木は顔を引きつらせる。こんなにも自分を想ってくれていた人を・・黒川は殺したのだ。そして。黒川もトモヨの言葉を文章に残しておくほどに愛を欲していた。誰よりも愛に執着し、人を愛したかった黒川。だが、その家庭環境と境遇のためか、その愛を得ることはなかった。もしかしたら、その方法を学ぶことができなかったのかもしれない。得られたことがないから、その与え方もわからない。負の連鎖はこうも簡単に繋がっていくのだ・・。
鍵を無理やりこじ開け中に飛び込む!黒川がいた!!黒川は啓吾に飛びかかられたが、ナイフを振りかざしてけん制し、梅木も吹き飛ばして屋上に逃げた。が!鬼の形相で啓吾は屋上まで追いかける!啓吾の攻撃に必死にナイフを振りかざす黒川。啓吾はナイフを叩き落し掴みかかるが、黒川は啓吾に殴りかかり啓吾は吹き飛ぶ。しかし、拾ったナイフを後ろ手に封じてとうとう、啓吾は黒川を羽交い絞めにした!「殺せ!俺が憎いんだろ!?俺はもう人間の振りすんのは辞めた。おまえも・・早く正体出せよ!」啓吾はナイフを、いつのまにか黒川の首に突きつけていたのだ。「どうした!?どうした?またおまえらの前に姿現してやるよ!」「啓吾!」茉莉亜の叫びに我に返る。だが!今度は啓吾を突き飛ばし、黒川に銃口を突きつけていた梅木がいた・・。
「悪いなあ、加藤。こいつは俺が殺すよ。おまえには愛する人がこの世にいる。」梅木は笑っていた。「俺はこいつ殺して、トモヨに知らせにいくよ。なんべんも死のうと思ったんだが、これでやっと望みが叶う。加藤・・俺はもう、生きていく気力がないんだ。」啓吾は呆然としながらへたり込む格好で静かに梅木に話しはじめた。「・・梅木さん。梅木さん。あんたの負けですよ、それ。あんたが・・そいつを殺した時点であんたはもう獣ですよね、人間じゃなくなる。・・トモヨさんになんて報告するんですか?・・前に言ってましたよね?人間はもう駄目だって。そうですよ!人間なんて終わってんですよ!こんな世界とっととなくなっちゃえばいいんですよ!・・いいですよ?とっととお先になくなっちゃってくださいよ?」啓吾は座り込んで泣き笑いながら梅木に言っていた。「でもね・・。俺は絶対にあきらめませんよ。憎しみじゃなくて愛を武器に戦っていきますよ!愛の力を信じて生きていきますよ。憎しみってやつと一生戦い続けてやりますよ!馬鹿にしたきゃしろよ!俺は・・あんたを絶対に見返してやる!あんた以上の刑事になってやるからな!」啓吾は立ち上がって梅木を指さしていた。「・・くやしかったら、俺にほんとにできるか、見届けてくださいよ!俺に本当にできるか、見ててくださいよ!!」「・・・。」梅木は銃口を黒川の頭から下ろし、へたり込んでしまった。「・・トモヨ、トモヨ!生きてあなたを忘れやせん!!トモヨ~!!」梅木は泣いていた・・。この瞬間に、梅木の復讐も幕を閉じた。その結末は、ひとりの男の愛を信じる心によって封じられたのだ・・。太宰はあとで啓吾に言う。「俺は・・おまえを馬鹿になんかしない!」それは太宰の啓吾に対する敬意だった。啓吾は少なくても今回、最後の最後で自分のやり方で一番大切な人を守ることができたのだ。。
茉莉亜は啓吾とふたりで歩いていた。啓吾は言う。結婚はふたりで幸せになることじゃなくて、不幸せになることなんだってと。その意味が茉莉亜にもわかったようだ。もう茉莉亜は啓吾の傍を離れることはないだろう。
梅木は警察を辞めた。東野は改めて思う。本当は梅木の背中を憧れていた自分だったのに、そうなれているのか?自分のような人間が出世していいのか?今のままでいいのか?だが、梅木はそれでいい。と笑って去っていった。薫の誘いに答えて、食事の約束をして。。啓吾にも軽く敬礼をして去っていく。まるで友人に挨拶するように・・。梅木はひとり責任を背負い、啓吾と中央署を守ったことにもなる。
いずれキャリアになる伊坂も啓吾に自分に自信がないことを告白していた。それに、「そこから始めるしかないんじゃない?」と言う啓吾。もしかしたら、啓吾と伊坂の関係も将来、梅木と東野の関係に近いものになるのかも知れない。
後日。忘れ物を取りに来た梅木に啓吾は出会う。梅木は言う。黒川はもうひとりの自分達だと。「それでも、何もしないよりもマシだ。無理だとわかっていてもあきらめるよりも。人を愛するほうがマシだ。加藤刑事の健闘を祈ります!」その梅木の言葉は啓吾にとって、これからの最大の糧になることだろう。見ると、梅木は背を向けもう、歩いていってしまった。

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