「スマイル」まとめ中編

「スマイル」まとめ中編
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http://www.tbs.co.jp/smile09/
#5
町村フーズが納品していたお赤飯が原因で小学校が集団食中毒となってしまった。もち米から毒物が検出されたのだが、そのもち米実は、帝国食品からの納品物!町村フーズは濡れ衣を着せられてしまった・・。ビト達は自分達の名誉を守るため、伊東一馬弁護士と共にこの難関を切り開こうと奮闘し始めた。だが・・このタイミングで招かねざる客がビトの前に姿を現してしまうことになる・・。
一馬とビトは帝国食品の不正証拠集めのため外回りをしていた。そこへ林誠司が現れる。短めの髪を金髪に染め上げた端正な顔立ち。だが、その正体は狂気をはらんだ鬼なのだ。「元気だったか?あ?」ニヤニヤ笑いながらビトに話しかける林。だがビトは体を硬直させて返事もまともにできない。恐怖で体が凍りついているのだ。林はテレビで偶然にも町村フーズの騒動を見てしまった。そこにビトが写っていた、簡単に見つけられたわけだ。「なんか~大人になったっていうか、お行儀よくなっちゃったんじゃねえの?ビートちゃん。」ビトの表情と林のオーラに一馬もただならぬ雰囲気を感じる。なんだこの男は?・・
ビトと林、一馬はカフェレストランに場所を移した。一馬は少し離れた席でコーヒーを飲んでいる。「・・出所されたんですね?」「ご祝儀くれっか?今いくら持ってる?財布だせ。」「おいおいおい君。」一馬が口を挟んだ。「なーんつって。冗談だよ。煙草あるか煙草?」「・・煙草止めたんで。」「ああ?おまえほんとあのビトかよ!?」「・・すいません。」「甲斐の野郎、今何やってるか知ってる?」どうやら林は甲斐のことをぶっ飛ばすのを楽しみにして刑期を過ごしていたようだ。甲斐の言葉に一馬も反応する。ビトと知り合うきっかけになった裁判も、大元は甲斐達ヤクザが絡んだ覚せい剤事件だった。ビトの昔の仲間は達の悪いのが多いな・・と改めて感じる一馬。ビトは無言。「どうせおまえあれだろ?シャバでも弾かれまくってんだろ?」無言のビトに、「また俺が守ってやるからよ。ん?」一瞬やさしい顔をみせる林、だがその瞬間ビトの髪の毛を掴んだ!「おまえの会社、今やべえんだろ?どさくさにまぎれて通帳でも金でもなんでもガッと持ってこい!」「君君君。何怒ってんのかな~。」一馬がまた口を挟み、煙たがる林。邪魔すんなと追い払い、ビトに携帯の番号を入れろと命令する。「また楽しいこといっぱいしようぜ。」ビトに笑いかける林。ビトは恐る恐る林の携帯に番号を入れようとするが、「はいビト。入れんな、教えんな。さ行くぞ。」「おっさん!待てコラ!!」「またムショに逆戻りになるよ。」「ビト?何弁護士とつるんでんだよ?法律はおまえを縛りつけるけど、守ってはくれないんだよ?一度でも法律がおまえを守ってくれたか~?」その声を背中にふたりは店を出て行く。その態度に、林は薄ら笑いを浮かべた・・。
「ああいう男には関わるな。それより告訴の件だよ。」リナの母親に個人的にも訴えられてしまったビト。「あやまりに行きたいです。とにかくあやまりたいです、きちんと。」ビトは一馬に言う。好意でリナにおはぎを作って持っていったビト。だがそのもち米にも問題があり、リナはまた入院してしまったのだ。町村フーズの件と重なり厄介な問題が続出なのだが・・ここはビトの言うように、誠意をみせるのが一番いいだろう。一馬とビト、町村しおりはリナの母親に会いにいった。
ビトの謝罪にもあまりいい顔をしないリナの母親。だが、リナは今のところ後遺症はでていないらしい。ビトは安堵の顔をする。そこへしおりが母親に訴えかけた。本当に悪いのは彼じゃない、我々が本当に責任があるのは誰か、きちんと証明してみせます!一馬はそのしおりを静しようとしたのだが・・母親は激昂してしまった!「責任転換するの?謝罪にきてるんじゃなかったの!?あんたち一体何しに来たのよ!!」人の誠意や真実は、時に人に正確には伝わらない・・。「勉強になったろ。」帰り道、一馬はしおりにそう言うしかなかった。
しおりはビジネスホテルに帰った。そこには花がいる。実はマスコミが町村フーズを依然取り巻いているため、花のために一馬が事務所の近くに用意したのだ。色々あって気持ちが暗くなるしおりだが、花の笑顔に少し元気になる。本当は自分じゃなくてビトとふたりきりの方がよかった?と思わずからかってしまう。それがきっかけで花はしおりに恋の相談をしてきた。。気持ちは伝えたけど、「ありがとう。」とそれだけ。と不安がっている花。「いいじゃん!最高じゃん~!」としおりは騒ぐ。ビトは花ちゃんのことをどう呼んでいるの?と尋ねると、「ねえ。」とかばかりだとメモに書く花。「そっか。やっぱ花とか呼んでもらいたいよね、せめて花ちゃんとかさ~。」しかし花も逆に聞いてみる。一馬先生のことは?と。しおりはそれ以降、なんとなく一馬を意識してしまうのだった。。それともやっぱりしてない・・?
花としおりがいない夕食。一馬も交える団欒のひと時だが、以外にもみんなの顔はそれほど落胆している様子はなかった。町村宗助とみどりの顔も明るい。どうやら取引先の相手は契約をきるということはなかったそうだ。「社長の人柄じゃないすか!」ブルも喜びの声を上げる。しかしいいことばかりではない、帝国食品の不正を他の業者も知っていながら口を閉ざしている。あれは帝国食品が圧力をかけているからだろう・・。だが宗助はもし逆の立場だったら自分らもどういう態度をとっていたかわからないと言う。そう言う宗助に改めて好感を持つ一馬。こういう状況でそう言える強さに心打たれる。「明るい未来がすぐそこに待ってる!」みんなを励ますように言う宗助に、ビト、金太、ブルも目を輝かせた。なんとしてもこの人達の無実を証明しなければならない。一馬は心に誓う。
その頃。北川検事に執拗に笑顔でからんでくる古瀬刑事がいた。北川にとっては古瀬はあまり歓迎できる相手ではない、彼のビトに対する偏見の目で、前の裁判も負けたようなものなのだ。もともとビトは無実だったのに古瀬の偏見で犯人に仕立て上げられたようなもの。「ビトがいるところ必ず厄介が起こる、悪い芽は摘んでおかないと。」古瀬はそう信じて疑わない。その言いようにうんざりする北川。だが、あなたも伊東一馬をぶちのめしたいのでは?という古瀬の言葉には笑みを浮かべるのだった。
突然金太が悲鳴を上げた。新聞記事の週刊誌宣伝見出しにとんでもない記事が載っていたのだ!<元犯罪者を安月給で。社長は保護司の仮面を被った悪魔。女性元従業員にセクハラ。毒食品会社社長は偽善者。>あまりの記事内容に宗助の顔は蒼白になる。みどりも険しい顔になり、ビトも驚きを隠せない。女性元従業員の告白って・・。
金太とブルはその女性元従業員の住んでいるアパートにすっ飛んでいった。今は結婚して町村フーズを辞めて新婚生活を送っていたはず。実は金太は惚れていたらしい、やけに太った女だったのだけど。。金太はいきり立つブルをなだめているが、ブルはドアをガンガン叩く!ミナコが寿退社したあとに花が入ってきた。しかしこの仕打ちはどういうことなのか!?・・そこへカンカンッと階段を上ってくるひとりの金髪スーツの男。金太は思わず体を引いてしまった、林誠司!!「ややや?金太君?なつかしいなあ。今ビトと同じとこで働いてんだろ?」「おい、金ちゃん。誰よこいつ?」ブルは林にガンをつけた。その瞬間!!ブルは体を放りだされ足をかつぎつかまれ階段に転げ落とされた!ゴロゴロ下まで落ちる。ブルは突然の攻撃に四つんばいになって地べたにへばってしまった。「おい少年?何俺相手にやる気になってるんだ?」林は階段を下りてきてブルを蹴飛ばす。畳んで置いてあった一階の部屋のベビーカーでしこたまブルを殴りつけた。金太は悲鳴を上げて土下座する。「かんべんしてください!すいませんでした!!」
夜。ブルの手当てをしながら金太は言う。「・・もしかしてなんか絡んでるっぽくないか?林さん。」「・・・。」ビトは深刻な顔になった。ミナコのアパートになぜ林がいたのか?・・ミナコは林に脅されてあんな告白を週刊誌に・・?
それからの世間の態度が宗助に対し変わった。突然の取引先の契約打ち切り。銀行の融資の打ち切り。それだけならまだしもいままでの借款を返せという。今まで長年持ちつ持たれつやってきた仲の突然の変わり身。宗助は銀行相手に土下座までしていた・・。だが何も状況は変わらない。前日、ミナコのことも何か理由があるのだろう?としおりがいきり立つのをなだめて、こういうことをビトも味わってきたのだろう?とやさしく言った宗助。「ビトを見習わないと。笑顔でがんばろう!」とみんなを励ましていたのだ・・。
花はサガミと会っていた。サガミはビトに花の父親の事を話したと説明した。驚く花。そして、それを聞いたビトは((花を守りたい))と言っていたよ。と花に教えた。思わず涙があふれてくる花。「素敵な人に出会えたね、花ちゃん。」うれしくてさらに泣いてしまった花。「僕の役目は終わったかなと思ってる、これからは彼と素敵な未来を作っていくんだよ。」サガミも涙目になっていた。花の心の底からの笑顔に安心したのかもしれない。「花ちゃんはもうきっと、大丈夫だよ。」
銀行での帰り道。宗助はふと思い出したように電話をかけていた。みんなをちょっと洒落たレストランに呼び出す。実はビトの誕生日だったのだ!こんな時にも宗助は忘れていなかった、なんて男なのだろう。26歳のビトの誕生日にいくつかの本をプレゼントする宗助。それはビトが夢見る多国籍料理の店のための本だった。花も笑顔になる。「I have a Dream だね・・。」しみじみ言う一馬。ビトの顔を真剣に見る。<この男はいままで理不尽な出来事を色々味わってきたのに、それでも夢を持って生きているのか・・>そして笑顔になる。一馬にとって町村フーズのみんなとの、そしてビトとの出会いは確実に自分の中の何かを変えていっているようだ。
そして、ここで食中毒事件が転機を迎える。帝国食品の社員のひとりが弁護士事務所を尋ねてきたのだ。彼は、帝国食品の不正を証言してくれるかもしれない。そして、花はあらためてビトに誕生日プレゼントを渡す。それは、遊園地のチケット2枚だった。。「花ちゃん!ありがとう。・・休み日、いっしょにいけたら行こうね。」その言葉にうれしさ満開の花。事態はすべてが再び好転してきたかに見えた。しかし・・。
みどりが事務所に電話をかけてくる。宗助が自殺したのだ・・。

#6
町村フーズ社長・町村宗助が自殺した。自分たちの会社が不当な濡れ衣を着せられ世間から、法律から責められる。それでもめげずに、しかも最後までビト達従業員を励まし続けていた社長。だがあまりに突然の宗助の幕切れにビト達は悲しみに暮れた・・。
葬式。たくさんの人達の中にひとりの男をみつけビトは目を見張る。それは宗助と日ごろ仲のよかった銀行の男だった。その男に泣きながら思わず声を荒げてしまうビト。「なにがすみませんなんですか!?社長殺したのはあんた達でしょ!?社長困ってる時助けてあげたじゃないですか!?なのに・・なんでその社長に!なんで追い詰めるようなことを・・。」伊東一馬はビトを後ろから羽交い絞めにし、それを止めさせながらも切なそうだ。気づけばその銀行員も涙目になり蒼白、彼もまた宗助と翻意な関係を続けていきたいひとりだったのだ。銀行の非情な決断は彼の責任ではない・・。金太とブルも涙目でうつむき、花も泣いていた。町村みどりも必死に涙を耐えている。いつのまにかマスコミまでが駆けつけ、扉のガラス越しからフラッシュを焚いていた。たまらず今度は町村しおりがマスコミに向かい、カメラに腕を振り回した。一馬は今度はしおりを止める。「少しは遺族の気持ちも考えろ。」一馬はマスコミにそう言うが、毒入り作ったのはそっちだろ?と冷たい言葉が返ってきた。「真実は必ず別にある。それをきちんと証明してみせる。・・今言えるのはそれだけだ。」しおりを支えながら一馬はマスコミ達に背を向けた・・。
宗助はみどりも知らないところで別の生命保険をかけていて一億もの金を残していた。それをみどりから聞き、涙するビト、金太、ブル。町村フーズは残るのだ。自分達前科者を路頭に迷わせないための宗助の心使いに感謝する。なんとしても宗助の名誉を取り戻したい。ビトはやはりミナコにもう一度会いにいこうと提案した。「本当のこと話してもらおう。」「でもさ・・ミナコの周りには林さんが。」「・・そんなこと言ってる場合じゃないよ。社長の名誉挽回のためだよ。」ビトと金太、ブルは再びミナコのアパートに出向き扉を叩いた。部屋は静まりかえり、人がいる気配はない。・・だが薄暗いその部屋の中で薄ら笑いをうかべていたのは林誠司!!口に手を押し当て必死に笑いを堪えていたのだ・・。
一馬の事務所で対策を練る一同。帝国食品のサハラはあれから携帯も繋がらない。宗助が死んでしまって怖くなってしまったのかもしれない。もしサハラが帝国食品の不正を告白してくれれば事態は一挙に好転するはずなのだが。直接会いにいきましょうと一馬に言うしおり。それに同意する一馬。何にしても一度事務所に来てくれたサハラなのだ。何かを話してくれる気にはなってくれていたはずだ。一馬はミナコの件、大家に言って鍵を開けてもらえとビトに言う。自分が週刊誌に話した内容がさらに町村フーズを追い詰め宗助を自殺に追い込んだと知っているはずだ、「変なことを考えないともかぎらないだろ?」
大家に鍵を開けてもらい、ビトと花はミナコの部屋に入る。そこはつい最近までたしかにミナコがいたような形跡はあった。だが誰もいない。たしか結婚して新婚生活を始めていたはずなのだが。なんとなく風呂場に気配を感じ扉を開ける。!?「何勝手にひとんちあがりこんでだよ~。って俺か~!」突然笑い出す林。普通に風呂に入っているのだ、林が・・。あまりの事態にビトは硬直してしまっていた。風呂からでてきて冷蔵庫のビールを飲み始めた林に、ミナコの居場所を尋ねるビト。「実家に戻るってよ。でその間ここ使っていいって話になってな。」タバコに火をつける。「林さん・・ミナコちゃんとはどういう知り合いなんですか?」「俺が頼んだんだよ。雑誌の記者紹介すっからあの会社の悪口しゃべれって。」目を向くビト。「あの女も相当金に困ってたみたいでなあ、うまいこと言って雑誌の記者に10万の謝礼用意させたらおまえ、べらべらしゃべってくれたよ。」・・・ビトは無言で林を睨みつけている。「ビト~?あの話忘れてねえよな?社長首吊ったんだろ?あの会社潰れんのも時間の問題だな。それより保険金とか入ってなかったのかよ、そのオヤジは?あ?早く金パクッてこいよ。」ビトを睨みつけ、「で、さっさと甲斐のやつぶっ殺すぞ。」なにかうっとおしそうにタバコを吹かす林。「返事は!?」・・・ビトは恐怖からか硬直して動けない。ビトの昔の悪時代、自分達のチームリーダーが林だった。そのチームの抗争相手が甲斐が頭を張っていたチーム。抗争中、林は無茶苦茶に暴れ周り死者重傷人を多数だした。甲斐にも顔に今も残る傷を刻みこんだ。その時の林の罪を多分ビトがかぶったのだろう、ビトは仮釈放の身なのだ。結局林も別の罪をまた作り、刑務所に入っていたのだ。だが出所して再びビトの前に姿を現した、最悪の形で!間接的に宗助を死に追いやったのは林だったのだ・・。バチン!花がビトの前にでて林に平手打ちを食らわせた。花は林を睨みつけている。「は?・・うはは、うひゃひゃひゃひゃ!」林は笑いだした。「気合入ってんじゃん?ビトの女か?あ?」瞬間的にビトは花の肩をつかんでその部屋をあとにしていた、林の狂気を知っているからだ。そのふたりの姿をひきつった笑みで林は見送っていた。
そのころ。一馬としおりは帝国食品に出向いてサハラに面会を申し込んだがやはり彼は出てこない。しおりは乗り込みましょう!といきり立つが一馬はそれをおだやかに制す。「いいかい?サハラアキオは敵じゃない。味方なんだ。彼の立場にたってものを考よう。彼の意思で話してもらえるようにね。」ようやくビルを出てきたサハラのあとを追いかけ、「真実が知りたいのです。」と訴えかける一馬。「父の潔白を証明できるのはあなただけなんです。」しおりも言う。しかし・・泣きそうな顔でサハラは去ってしまった・・。
帰り道。花にごめんね・・。とあやまるビト。林は昔からの知り合いと説明するが、花は関わってはだめとひたすら身振りでビトに伝える。「なさけないよなあ、ほんとは男の僕が守んなきゃいけないのに。助けられてばっかいるよね。」花はそんなことない、やさしいとビトに伝えた。「やさしいだけじゃだめだよ。」・・じゃあずっと守って。と花は伝えてくる。「そうだよねえ。」それを聞いて花は明るく笑った。ちょっと先に歩きだしたビトの服を後ろから引っ張ってついていく。・・・こんな時にでもいちゃついてんじゃねえ。。そうだよねえって、どんな返事よ!(笑)
「結婚してんだろ!?一体旦那は何やってんだあ!」ビトの話を聞いたブルはいきり立つ。ビトはミナコの実家に金太もいっしょに行こうと誘うが金太はビトと花ちゃんにまかせると言った。自分とブルはもうひとつの件を当たると。実は帝国食品の卸業者のひとりが帝国食品に口止めされていたことを告げにきたのだ。ようやく一馬とビトが外回りで一件一件業者を回っていた効果が現れてきた。その社長にあの話を警察に話してくれるよう説得に行くという。手分けして事態にあたることにしたのだ。
ミナコは実家にいた。ビトの顔を見て怒らないの?と尋ねるミナコ。穏やかな顔で、怒ってるよ。とビトは言うが、社長は最後までミナコのことを信じていたよと伝える。ミナコはそれを聞き泣き出してしまった。ミナコは結婚していなかったのだ・・。結婚詐欺にあい貯めていた資金も取られお腹の子供はどんどん大きくなる、誰にも言えずお金に困っていた。そこへ林が現れた・・。ミナコも傷つき、そして罪の意識で苦しんでいたのだ。
「マスコミだな。社長はある意味こいつらに追い詰められたんだ。」一馬は雑誌をデスクに放る。逆にマスコミを使って世間に訴えかけようというわけだ。こちらに切り札はようやくそろったところ!それには帝国食品に口止めをされていたことを教えてくれた業者社長と、ミナコが協力してくれた。ミナコにいたっては顔出しでTV放映される。ミナコは罪ほろぼしと使命感で顔を出したのだ。これにより町村フーズの立場は回復したといってよい、社長の名誉も。
検察庁で北川とすれ違う一馬。「北川!恥の上塗りしたくねえなら、間違い認めてさっさと帝国食品にガセかけろ。」「言われなくてもとっくに手続きしているんだ!こっちだって。」悔しそうに去っていく北川。これにより強制捜査が帝国食品に入った。だが、それを見越して証拠隠滅を図るだろう・・。「下手すりゃ帝国食品逃げ切るぞ。」一馬の言葉にビトはサハラに会いにいく。道端で呼び止め、土下座して頼む。それは鬼気迫る必死の願いだった・・。サハラは証拠を隠している施設を教えてくれた。彼も自分の会社を裏切る行為をしたのだ、それは勇気ある言葉だろう。「ありがとうございます!」ビトは頭を下げる。サハラも頭も下げた。「・・本当にすいませんでした・・。」
産地偽造、米を消毒した際のクロメタホス混入、数々の証拠隠滅の書類はサハラの言った場所から出てきた。これにより帝国食品はそれ相当の処罰を受けることになるだろう。みどりは宗助の遺影に涙をみせていた。みんなが協力して無実を晴らしてくれた。お父さんのやさしさはみんなに受け継がれているよ。としおりもしゃべりかける。散々追いかけまわしていたマスコミの姿も消え、これでやっと、町村フーズは平穏を取り戻したのだ。だが・・強制捜査のTV中継を睨みつけるように凝視する林。その顔に一筋の汗が流れている。その目はとてつもなくするどかった・・。
すべてが一件落着し、花はビトをデートに誘う。絶大な信頼と愛情をビトは花から受けているようだ。実はビト、まだ花が小学生の頃に会ったことがあった。ランドセルを踏み切りの警報機にぶら下げられていたところを取って渡してあげた。いじめられていたであろうことはビトもその時わかったであろう、だが、そのことには触れずやさしく花に渡してあげたのだ。ビトはもう覚えていない。しかし、花はずっとそれを覚えていたのだろう。「いけ、いけ!花ちゃん逃したらな二度とおまえに女なんかできねえんだぞ!」金太とブルはビトを冷やかす。そんな時、男部屋に花がやってきた。メモを渡す花はさっさと照れくさそうに去ってしまった。それを金太がビトから取り上げた。内容は<明日遊園地に行きませんか?>ビトが金太とブルからリンチされたのは言うまでもない。。(笑)
次の日。同じ建物に住んでいるのにわざわざ待ち合わせするお楽しみ。。花は待ち合わせの時間の前に美容室に向かったようだ。しかし・・その花の後ろを、林がゆったりと歩いていたのだ・・。

#7
ビトは花とデートすることになった。町村フーズは濡れ衣を着せられ、町村宗助が死に、一時どん底まで叩き落されたビト達。だが、ようやくすべての誤解は解け平穏が戻る。そんな中でようやくたどり着いたビトにとっての明るい出来事だった。しかし・・待ち合わせの場所で目撃した情景はビトの幸せを打ち砕くものだった。
ビトが待ち合わせの場所に着くと、花が林誠司に無理やり手を引かれ、タクシーに乗り込む所だった。ビトは大急ぎでタクシーまでダッシュする。「待ってください!開けてください!」ビトはギリギリの所で間に合いタクシーのボディを叩く。「出せって言ってんだろ!」林は後部座席から運転手に蹴りを食らわした!運転手を守るはずの防護ミラーが吹き飛ぶ。その隙に花はドアを開け、ビトの後ろに隠れた。「おいビト・・。」「失礼します。」ビトは花の手を引きそこから全速力で走りだす。「ちょっとお客さん!」林の肩を後ろから掴んだ運転手は、すぐさま林のコブシを喰らい、倒れたところに蹴りを浴びせられる。「どこ行きやがった・・。」林は冷めた目でつぶやいていた。うずくまる運転手のことなどまったく意に介さない。花がこのまま連れ去られていたら・・どうなっていたのだろうか。
走り疲れたビトと花は止まり、ビトが花に質問した。どうやら林とは偶然会ったらしい。だが・・林は町村フーズからずっと花のことをつけていたのだ。初めから花を標的にしてビトを呼び寄せるつもりだったのだろう。逃げ切った安心感からか、ビトは美容院に行ってきた花の髪型を褒めた。ようやくうれしそうな顔をする花にビトは言う。「怖い思いさせてごめんね。強くなるよ、絶対守るから。」花は思わずビトに抱きつく。ビトははにかんだ笑顔を見せていた。
その頃。伊東一馬弁護士は何十年ぶりかの元彼女と会っていた。昔一馬とは無理やり別れさせられたらしい元カノ。それで誰でもいいと思って結婚した相手とついに我慢の限界で別れることにしたというのだ。そこに愛はなかったと一馬に言う元カノ。一馬に対しては昔申し訳ないことをしたと思ってる、許してもらえるわけないとひたすら一馬に懇願する。だが一馬はうれしそうだった。自分もひさびさに会えてうれしいと思わず言ってしまう。。「じゃあ、思い切って話していい?」元カノの言葉にもじもじしながらコーヒーを飲む一馬。ヨリを戻そうという話かと一馬は思ったのだ。しかし!(旦那から慰謝料をとる相談)だった・・。「どうしたらたくさんお金ふんだくれる?」話のあと、一馬と別れた元カノは若い愛人の男が車で迎えにきていた。・・・一馬は途方に暮れるしかなかった。
ビトと花は遊園地には行けなかったものの、映画や食事を楽しむ。花はなんだかあいかわらず積極的でビトの手を握ったりしていた。。帰り道、花はまだ帰りたくないらしい。ビトはキリンを見に行こう!と花をドライブに連れて行く。「これ、誰にも言っちゃだめだよ。」そこは、たしかにキリンといえばキリンに見えるかもしれないが・・海の工場地帯に参列しているキリンに見える鉄の塊だった。。でも花は手を叩いて喜ぶ。たくさんのキリンを見ながら町村フーズの車に腰掛けたふたりは、なんとなく寄り添い(花のほうから)なんとなく目を合わせ、そしてキスをした。
ピュアラブラブなふたり。。<これは壮絶な生き様を見せた男の、愛と正義の物語だ>と一馬のナレーションが入るが、一馬はぜんぜんラブラブな展開にはならなかった。。一番いい男なのに、しおりと食事しながら散々に酔っ払い愚痴をこぼす一馬がかわいそう。。
その頃。林は甲斐の事を待ち伏せしていた。ひとりになったところへ甲斐に飛びつく!首に腕を廻し腹にナイフを突きつけた。「は~い、甲斐君ごぶさた。」!?「おい、また懲役逆戻りだぞ・・。」「そもそもその懲役はおまえのせいだろうが。」「逆恨みすんじゃねえよ。」顔がひきつる甲斐。「ここで腹かっさばいてやるよ。」カチリ!だが、林は後ろから銃を突きつけられた。甲斐は本物のヤクザになって、しかも幹部級。今の林の手の出せる相手ではない。すかさず林のナイフを叩き落した甲斐は部下達に命令する。「おい!こいつ殺せ。」林は銃を突きつけられ、どこかに連れていかれてしまう。「哀れな最後だなあ!」甲斐のニヤついた顔がエレベータの扉が閉まり消えた。しかし・・林はその甲斐の部下達を殴り飛ばし、蹴り、何度も踏みつけてどこかに姿消したのだ!路地で息切らす林は昔の女に電話する。「もう、かけてこないで・・。」電話を切られた林は呆然とした目で膝を落とした。自分と連絡をつけたがる人間はもう、誰一人としていない・・。いままでに何人もの電話キャンセルをくらっていた林。自分が刑務所にいる間に何もかもが変わってしまった・・。甲斐も・・そしてビトも。
リナの母親がリナと共にビトに謝罪に来た。告訴の件も取り下げるという。リナはクラスからいじめられていたが、ビトはそんなリナにやさしく接してくれていたことを母親が感謝する。すっかりビトに対しての誤解も解けたようだ。花はリナがいずれビトのことを好きになると可愛く嫉妬し、そんな花に今度は遊園地に行こうと誘うビト。その前に花は富士山に行きたいと伝える。ビトはあちこち住み込みで働いていた時、そっちのほうにもいったことがあると花に言う。花は意味深にうなずいていた。。
町村家にはあれから一馬も時々食事に招待されている。ビトが開こうとしている多国籍料理の店のために集めたレシピの多さに、驚きの声を上げる一馬。みどりもあれからずいぶん元気になったようだ。金太とブルも明るく飯をかっくらっている。まだ帝国食品への賠償問題が残っている。しかし、ビトや花、しおりやみどり、金太やブルが楽しそうに笑っているのだ。一馬の心はそんな平穏を噛みしめていた。たまたま昼間に町村フーズに顔出していた時に、あの男さえ現われなければ・・。
金髪にスーツ、前と同じいでたちで町村フーズに姿を現した林。「よお。ひさしぶり。」金太とビトは目を見開き、ブルは顔を歪める。「相談があって。ちょっと時間あるか?」「おいおいおいおい。」すかさず一馬が口を挟む。「此間は失礼しました。出所したてで・・苛ついてて。・・話聞いてもらえるの、こいつらしかいないんスよ。金太、おまえもいくか?」妙にやさしい目つきと口調の林、いままでとは別人のようだ。「信じてもらえないかもしれないんですけど、立ち直りたいんです。」「信じられないね。」一馬の返答に、「・・ほんとなんです。立ち直る相談、昔の仲間に聞いてもらっちゃいけないですかね?」それを聞き、ビトは一馬に自分も話があると強い眼差しを向けて言った。「僕自身が強くならなきゃ。」それはビトの決意の表れだった。自分自身の口で、ちゃんと林と縁を切らなければならない。いっしょにいこう。と言う一馬を制し、ビトは林と行くことになる。林は最後まですいません・・と神妙に頭を下げ、ビトと共に町村フーズをあとにした・・。
金太が一馬とブルに説明し始める。ビトと林との過去を。甲斐のチームと争っていた悪者時代、林が暴れまわった際引き起こした殺人傷害事件の罪を、ビトがかぶらなければならなかった要因、それは林の父親が警察庁次長というポストについていたためだったというのだ。穏便にすませろという言葉に、外国人労働者に偏見ありありの刑事が事件担当に配属される、それが古瀬。古瀬が担当なかぎり、当然容疑者探しはハーフのビトに向かう。まんまとビトは古瀬のいやらしさで犯人にされてしまったわけだ・・。そして、その後も滅茶苦茶やり放題の林に甲斐の仲間が復讐を企てる。もちろん林はその時も返り討ちにして甲斐のチームをボコボコにしてしまった。その時に金太も混じっていたのだが警察に捕まり、とうとう林もお縄になる。結局林の父親は責任をとり辞任、親子の縁は切られてしまったというわけだ。「甲斐が原因だと思ってるんスよ。父親さんが警察のお偉いさんから引きずり下ろされたのも、自分が懲役ばっかりの人生になったのも・・。」金太の言葉に一馬は呆れるほかなかった。(逆恨みもいいところだ、全部自分の撒いた種だろうに・・)
申し訳なさそうな顔と穏やかな口調でビトに話す林の話の内容はこうだった。(刑務所で働いて稼いだ金、10万ちょっと入っていた財布を落としてしまった。自分は昼間に交番にいける柄じゃない、いっしょに交番に行ってビトの名前で届けだしてくれないか?)「・・・林さん。もうかんべんしてください。」「え?なにが?」「僕はもう、まっとうに生きてくって決めたんで。」「・・俺だってそうだよ。」「もう林さんとはつるめません。何もかも終りにしたいんです。」「何もかもって・・。じゃ、わかった・・。交番だけはつきあってくれねえか?やり直すのに力貸してくれねえかな?頼むよビト。」林は頭を下げた。
車の中で林を待たせビトは交番に向かう。車から、「ビト、ありがとな。」林がお礼を言った。ちょっとうれしそうな顔をするビト。林さんもこういう一面があったんだな、もしかしたらいずれ林さんともうまくやっていける日が来るかもしれない、すべてを水に流せるそんな日が・・。財布を落としたというビトにやさしく警官が応対する。届けに名前を書いてくださいと言われビトはそれに名前を書いた。!!その時!一瞬にして現われた林に、警官の頭はかち割られていた。何度も何度も殴りつけられ警官は気絶、そこから拳銃と手錠を奪い取る林。林の手には手袋がしてある。始めからビトがやったようにみせかけるための細工だった!・・・拳銃を突きつけられビトは言うがままに林の言いなりになるしかない。林の嘘を見抜けなかった、それがビトの命運をまっさかさまに転落させてしまうことになる・・。
ミナコのアパートに連れてこられたビト。まだ林はこの部屋に入り浸っていたのだ・・。銃で脅し、手錠でベットにビトをくくりつける。林がトイレにいってる隙に一馬に電話するビト。「いまどこにいる?何があった?今TVで指名手配されてる。」!?ビトがテレビをつけると、自分の顔が画面にいっぱいに写しだされていた・・。「最悪だ・・。」とその時!花が部屋にさっそうと入ってきた。一馬や金太の会話で林が絡んでいることを知り、ここに来たのであろう、前にもきたことがあった花は、もしやと思ったのだ。だが・・ビトは手錠をかけられ動けない。ジャ~とトイレの音がし林がでてきた。花を見て、すわった目線を向ける林。そしてビトの携帯を切る。「あら?ビトちゃん、指名手配?」薄ら笑いを浮かべテレビを消す。「うがあ~!!」花を放り投げ、散々に蹴り飛ばす林。女の子だろうがなんだろうが、この男には関係ないのだ・・。花は気絶してしまう。林は(金を掴ませたホステスが甲斐をおびき出してくれる手はずだ)と話しだす。そこでこの拳銃で撃ち殺すという計画だそうだ。それをビトにやらせるつもりなのだ。手錠を外し銃を握らせる。「あのむかつくあの野郎から開放されんだぞ~?うれしいだろ?あ?ビト。」「もう甲斐さんとかどうでもいいです!」泣きながらビトは言う。「なんで・・僕なんですか・・。」「心配すんな。おまえが一仕事している間に、やっちゃったりしねえからよ。でもこの女しゃべれねえんだっけ?じゃあ襲っても声だせねんだ?じゃあやりたい放題じゃねえかよ。」花の顔をなで、ニヤついている林。!「・・死んでください。」ビトは震える手で銃口を林に突きつけていた・・。一瞬残忍な笑顔をビトに向け、その銃口を自分の心臓に押し当てる。「ほら!!撃てよ!ここ撃てよ、即死だ。撃てよ!!そのかわり失敗したらぶっ殺してやるからな!おまえ恩人に銃向けてんだぞ?おまえみたいな奴は俺といっしょにいればいいんだよ、このフィリピン野郎が!あ?早く甲斐のこと殺ってこい!じゃないとあの女やっちまうぞ。」!!その瞬間林は後ろに吹っ飛んでいた!心臓を打ち抜かれている。傷口を手で押さえ、もだえ苦しむ林・・。「ががが・・かっ。あっ熱っちい、熱ちい・・。あちゃ・・はあ。」心臓を打ち抜かれてもビトの方にはいずってくる。ビトを強烈に睨みつけ、だが首を落とした。・・林は絶命したのだ。ガタン!銃を落とし恐怖と失望で呆然とするビト。昔ミナコが住んでいたその部屋には、気絶している花と、ひとりの死体、そして失意と絶望を背負ってしまったひとりの男が、沈黙の中で震えていた・・。

#8
林誠司を撃ち殺してしまったビト。その銃を入手したのも、打たれる原因を作ったのも、すべて林自身の悪行だ。だが、ビト自身が警察から指名手配され、結果最悪の罪を自ら行ってしまう・・。もしこの状況で他に事態を回避する術はあっただろうか?冷静に考えればいくらでもあっただろう。しかし、自分の目の前で花に暴力を振るわれ、人質に取られたのだ。しかも林自身の心根も見えてしまった、自分を罠にかけたという憎しみもあっただろう・・。ともかく、長年恐怖の対象だった因縁ある林を、ビト自ら手にかけてしまったという事実だけが現実に広がる・・。
花が目を覚ました。ビトの姿を確認し、少し笑顔を見せる。だがビトは呆然と突っ立って花に言うのだ。「・・どうしよう・・殺しちゃった。僕・・殺しちゃった・・。」状況を把握した花は、よろけながらもビトの所へ歩み、抱きしめる。その途端ビトは泣き出してしまった。そして強く手を握り合う。花はビトの恐怖をやわらげようと必死だった・・。その傍らで、林がうつ伏せで死亡していた。
携帯に連絡を取るが、ビトも花も繋がらない。一馬は巻き込まれたな・・とうめく。そもそもTVで流れている交番での暴行事件をビトがやったとは到底思えない。ビトの顔が指名手配されていることが腹立たしい、もし自分があの時無理矢理にでもいっしょにいっていれば・・。金太はミナコのアパートで林と遭遇したことを一馬に教え、一馬、金太、ブルはそこへ向かう。ミナコの部屋のドアは鍵がかかっていなかった。扉を開けると、「うわあ!」金太とブルは思わずのけぞった。林の死体があったからだ・・。だが、ビトはいない・・。ひとまず一馬達は警察に通報することにする、ビトを探すのはそれからだ。だが!そのあとかけた携帯に、ビトがでた!「先生・・ごめんなさい、迷惑かけて。・・ごめんなさい。ごめんなさい・・。」ビトの声は泣いている。・・一馬は涙目でかぶりを振った。ともかくビトは生きていた、無事だったのだ。よかった・・。一馬はビトを迎えにいくことにした。しおりも一馬についていく。ふたりは車で出かけた。早くビトに会いたい。だが・・そのあとを車がつけていることに、ふたりは気がつかなかった・・。
ビトと花は富士の麓の町にきていた。そこはビトにとって一番穏やかな気持ちになれた場所だったという。中学を卒業してビトは住み込みの働き口で転々としていた。この町にいたのもわずかだったが、とてもいい思い出があった場所。どうしても最後に花ともう一度来たかったのだ。巻き込んでごめん・・と謝るビトに花は笑顔を向ける。<あの男から自分を守ってくれたんでしょ?>この花のやさしさと慈愛に、ビトは何度救われたことだろう。はからずも花も富士山に行きたがっていた。それは偶然だったのか・・。花とビトが一番最初に出会っていた場所が、もしかしたらこの麓の町だったのかも知れない。「いっしょにいてくれてありがとう。」それはビトの、花に対する精一杯のお礼だった。ふたりは抱きしめ合う。
夜の高速を飛ばす一馬の車のあとつける一台の車。それには古瀬刑事と高柳刑事が乗っていた。高柳は前のビトの裁判の時に、警察捜査の違法ともいうべき台詞を花に録音証拠として取られてしまった刑事。そのあと謹慎処分を受けていたが古瀬に呼び戻されたのだ、今回のビトの指名手配を手を叩いて喜んだ古瀬に。ふたりの目は嫌らしく輝いていた。ビトもこの悪質極まりない刑事達に目をつけられなければ、もっと運命が変わっていただろうに・・。
ビト達はトイレを借りに旅館を訪れた。親切な女将に案内されるが、番頭が気づく。<指名手配の男ではないのか?>ビトがしおりに電話を掛け一馬にかわる。自首するというビトに一馬は、「近くまで来ている。いっしょに行くから場所を教えてくれ。」と聞き、一馬達もその旅館に急行した。
一馬としおりが旅館に着くと、警察と機動隊が旅館を取り巻き、スピーカーで中にいるビトに何かを叫んでいるではないか!これにはしおりも閉口した。(いたずらにビトを凶悪犯にしたてようとしているだけじゃないの!?)一馬は警察と機動隊の中に古瀬と高柳を見つけた。<やはりそういうことか!?>「あいつは自首をするって言ってんだ。余計な真似するんじゃねえぞ。」一馬は古瀬に睨みを利かし、旅館の中に入っていった。一馬が歩いていると花が安堵の顔をして出迎えた。「はい!花ちゃん。大丈夫?」一馬も安心した、花も無事のようだ。そしてビトが出てきた。「もう大丈夫だ。」一馬はそう言い、旅館の中にいた女将や客達が怯えるのをなだめ、外に促した。弁護士のバッチはこういう時にこそ役に立つ。手を握りあうビトと花に穏やかな笑顔を向け一馬は言った。「行こうビト。行って、この状況をきちんと説明しよう。」ガチャン!!その時、突然旅館のガラスをぶち割り、起動隊が突入してきた!ビトと花は無理やり引き離され、抵抗する一馬は突き飛ばされた。ビトは大勢の機動隊に押さえつけられそのまま逮捕。(自首しようとしていたビトに自首はさせない)という事だったのだろう・・機動隊のあとに旅館に入ってきた古瀬と高柳の顔は嫌らしく笑っていた。こうして仮釈放中のビトは殺人容疑で再逮捕されてしまったのだ・・。
林の犯した罪をかぶり、その林自身をはからずも殺害してしまい、そして自首もさせてもらえなかった・・。このあとのビトの裁判に、もちろん一馬が弁護を引き受けることになるが、相当厳しい戦いになるだろう。検察側の検事はあの一馬を目の敵にしていた北川検事。警察も古瀬がからんでいる・・。そして、この裁判には裁判員制度が適用されることになった。まったく法に関わったことのない人間がビトの命運を左右する要因になる。このことは一馬にも始まってみなければわからない一因だ。だが、ビトに面会する一馬の顔はむしろ引き締まったいい顔立ちだった。
「ビトよ。おまえに話しておきたいことがある。」「なんですか?」一馬の言葉にガラス越しに身を乗り出すビト。一馬はしゃべりだした。「昔、ありえねえほど本気で惚れた女がいたんだ・・。でも、結婚できねえって言われた。なんでだと思う?」一馬は在日コリアンだったのだ。韓国人ではないのに外国人登録証をいつも持ち歩かなければならない。いうなれば韓国人でも日本人でもない、日本ではそういう偏見がまだまだ残っている・・。一馬の家は日本にいながら韓国性を名乗っていた。一馬もユン・ソンギと名乗っていた。恋人の両親に大反対され結婚はできず関係も終わった。自分の両親も日本人との結婚はなんとなくよく思われていなかった。そういう理由だったが、一馬は恋人を本当に愛していたのだ・・。そして話はもっと前にさかのぼった。「俺、初恋の子と中学の頃なんだけどさ、席が隣同士になってさ、ある日その子、俺のことジ~ってみてんだよ。うれしかったねえ、きたー!だよ。で思い切ってな、なに?って聞いてみたんだ。そしたらなんて言われたと思う?」一呼吸おいて笑う。「キムチ臭い~。って。」一馬は強がったのだ、<当たり前だ、うちはキムチ風呂に入ってるんだから。>それ以来、情けなくて恥ずかしくてキムチが食べられなくなったという。そしてついたあだ名が<キムチ>・・。グレかけたこともあったが勉強し司法試験を受けた。自分と同じ境遇の在日の人達を助けられる職業につけるかもしれない、そして国家資格なら在日というかせで出世における障害もないと考えたのだ。「でもな、在日は裁判官と検事にはなれねえんだ。弁護士だけなんだ、なれんのは。ずっと日本で暮らしているのに在日には選挙権もない。俺どっかでずっと不便だな、理不尽だなって・・。」そして務めていた弁護士事務所の所長に不便だから日本名にしたら?と言われたのだ・・。だが、その頃恋人と別れた直後だった一馬は、伊東一馬と名を日本名に改める。自分の存在がグラグラと揺らいでいた中でのひとつの決断。だがそれ以後も一馬はどこかで悩み続けていた。TVに出たがるミーハーな部分も、伊東一馬と名乗ることを自分に納得させるための手段のひとつにすぎなかったのだ・・。そこへビトと出会う。ビトは何事にもいつもめげなかった、いつも自分の夢に純粋だった、自分の出生から目をそらすことはなかった・・。「おまえと話すようになってな、自分の人生全部受け入れて、苦しみを笑顔で乗り越えてるおまえ見てて、俺何してたんだろうって思った。在日だったこと、帰化したこと、自分で自分の人生否定してなんになる?俺も俺の人生すべて受け入れて、俺の人生誇りに思って笑顔で生きなきゃなって。おまえがそう思わせてくれたんだよ、おまえの笑顔がな。」
その頃。一馬の元カノ、一馬の恋人だった女性が事務所に顔をだしていた。今日はしおりに用があったという。しおりも一馬が在日だったことを始めて知る。一馬のことは本当に愛していたという。だが、うまくいかなかった・・。今も彼は出生について色々苦しんでいるのかも知れない、しおりに一馬の事を頼みます・・。と元カノは去っていった。(ソンギでも一馬でも、彼が素敵だったということには変わらない)それがわかっただけでもよかったと。時間は元に戻せない、自分も前を向いて進まなきゃ・・。一馬にこの前会いにきたのは、彼女なりの最後のけじめだったのかもしれない。
「今からの戦いは、おまえだけのものじゃない。俺自身のためにも俺は精一杯戦う。必ずおまえに、心からの本当の笑顔を取り戻させてみせる。がんばろうな。以上。」一馬はビトに満面の笑顔を見せた。「一馬さん・・。ありがとう。」ビトは一馬に礼を言う。ふたりの男の絆は本物になった。そして・・運命の裁判が始まる!

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