「銭ゲバ」まとめ後編

「銭ゲバ」まとめ後編
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#6
三國造船の新社長になった風太郎。風太郎は三國で働く派遣労働者を正社員に採用、親のいない子供達を今から学ばせ、いずれは三國で働く人材を育てる研修制度、医療問題に着目し寄付などの社会的貢献をする活動を始める。世間や三國造船内での評判はすこぶる新社長に友好的だ。苦労してきた分、やさしい人間だと。
だが・・「働けえ、蟻ども。俺の銭を増やすために。」風太郎にとってそれらの活動は、いずれ自分に返ってくるために周りに飴を与える策のひとつにすぎなかった。「銭の山ズラ。こんだけあると、数えるのも無理ズラね。」社長室の金庫を開け、大量の札束を見て笑う風太郎。そんな風太郎に荻野とその相棒が訪ねてきた。
「これが君の手に入れたかったものか。社長の座についてどう?楽しい?幸せ?」「忙しいだけです。」「よく眠れる?」「どうしてですか?」「いやあ。捕まる夢とか死刑になる夢とか見ちゃったりするんじゃないのかなって思ってさ。」「おかげさまで。よく眠れます。」笑顔で答える風太郎に、荻野は自分の弟がなぜ風太郎に殺害されたと思っているのかを話す。あの日、荻野の弟は子供を追いかけていたという証言がある。そしてその子供はバットを持っていたと。それを聞いても笑顔の風太郎。荻野達は去っていくが、依然として荻野達は風太郎をマークし続けているのだ。
風太郎は死んだ母親の墓を立てた。そして、自分はお金持ちになったと報告する。風太郎はお金があったら実現したい夢がたくさんあった。それはまだ幼かった頃の記憶。それは母親といっしょに楽しく遊びにいくこと、ふたりで住む家を建てること。だが・・もう母親は死んでしまった。「せっかくお金持ちになったのに、全部実現できないよ・・。」墓の前で号泣する風太郎。その顔は険がとれ穏やかな顔になっていた。風太郎が心を許せる存在、それは死んだ母親だけなのだ・・。
帰ってきた風太郎を茜がやさしく出迎える。だが、風太郎は少し機嫌が悪いようだ。ひとりにして欲しいと茜を応接間から部屋に戻るように言う。「聞こえないのかよ!」応接間には風太郎と車椅子にうなだれて座っている緑だけが残された。風太郎は思い出していたのだ。さっき出会った母親とそっくりの女のこと。その女はホームレスだった。風太郎はその女に大金を掴ませホテルに泊まらせる。風太郎にとってそれは善意だったのだろうが、その女は困惑していた・・。ふと横をみると廃人と化した緑。風太郎の目に残忍な光が点る。「あっさり壊れちゃったね。」緑の頭を掴みグリグリ回す。もう風太郎にとって緑は、ただの壊れたペットにしか見えないのか?そして茜も、出会った時のやさしさが今の風太郎からは感じられず悲しんでいた。それでも、あの人を理解できるのは私だけ。と耐えている・・。メイド(使用人)のハルも、風太郎の残忍さを知っているためか恐怖でただ黙っていることしかできない・・。三國家は、譲次が死んでから風太郎の独壇場と化してしまった・・。
風太郎は突然荻野を呼び出していた。不審がりながらもやってきた荻野。その目の前で、札束をひとつまたひとつと机の上に積み上げ始める風太郎。荻野は心臓の悪い妻がいる。そのことを知っていてやっているのだ・・。心臓移植ではたくさんの金がいる・・。「お金で助かる命なら助けてあげればいいじゃないですか?息子さんのためにも。」笑いながら挑発する風太郎。その行為は荻野の逆鱗に触れた!ぼろくそに風太郎を殴りつけ、警備員に連れていかれる荻野。「頭の悪い男ヅラ!」口から出る血を拭い風太郎は叫ぶ。自分のしている行為を異常だと気づかないのか?確実に風太郎の心は壊れ始めていた・・。
そんな風太郎に唯一の憩いの場がある。貧乏ながらも明るい人達、伊豆屋という定食屋。そこは派遣労働時代から通っていた場所。お店の主人達の家族とも仲がいい。実は風太郎にそっくりな風来坊の兄貴がいるらしいのだが、風来坊ゆえなかなか帰ってこないらしい。その伊豆屋には女子高生の女の子がいて、そのそっくりな兄貴の妹らしく風太郎にもなついていた。だが、その子は風太郎がいつぞやビルから札をばら撒いていたのを目撃していた・・。そして今、その拾った一万円を風太郎に返す。「・・嫌いになるからね。」この女の子はどこまでも純粋だ。風太郎も本当は知っているはずなのだ、この一万円を稼ぐのがどれだけ大変かということを・・。そして。偶然にもそっくりな風来坊兄貴が伊豆屋にひょっこり帰ってくる。だが、風太郎はその姿を見て不敵な笑みをみせるのだ・・。
風太郎は今度は父親・健蔵を呼びつけた。社長室にふたりきり。風太郎は満面の笑みを向け、健蔵に10億円を見せた。「約束しましたよね?10億渡したら死ぬって。金持ちになってよかった~。一番いい使い方ズラ。」驚愕し目をむく健蔵。「最後くらい息子に男らしいところみせたらどうですか?怖いんですか?受け取るのが。」その挑発に乗り、健蔵はそのアタッシュケースを引きづりあとにする。その背中に、このまま逃げても絶対に見つけると脅しをかける風太郎。「約束を果たして死ぬか、俺を殺すしかないズラ。」「さよなら・・風太郎ちゃん・・。」
風太郎はハルにお菓子のツリーを応接間に運ばせた。注文した品が届いたのだ。それは幼い頃、緑といっしょに食べたお菓子。だが、母親のために持ち帰ろうとして緑に泥棒扱いされた思い出があるお菓子だった・・。応接間には車椅子に座る廃人の緑がいる。それを眺めながら風太郎はそのお菓子を食べた。「大人になっても緑さんはなんにも変わってなかったよね、真っ直ぐで潔癖で。本当に騙しやすかったよ。」笑いながら緑につぶやく風太郎。お菓子を一口食べ、それを放り、またひとつ摘んでまた放る。それを繰り返し鼻歌交じりだ。だが、そのうちにお菓子のツリーを叩き壊した!「くだらねえ・・。」飛び散ったお菓子を拾い、手で丸め、それを緑の口になすりつける!「ほら食べなよ。」バチン!!突然風太郎は平手打ちを食らわされた!「可哀相な人ね!!」緑は正気だったのだ・・。
「あなたも騙しやすかったわよ!!」緑は自分の身を守るために廃人の振りをしていた、そして風太郎の真意を探るために。「自分の不幸を全部周りのせいにして、持ってるものから奪えばいい!?そのためならなんだってする!?まるで獣以下よ!!」いつしか緑は風太郎の上に馬乗りになって叫びちらしていた。風太郎は驚愕し声もでない・・。「お金に勝ったつもりでいるの?風太郎君?」緑はククク・・と不気味に笑いだした。「あなたはお金に負けてるのよ!?お金のために人生使って結局負けてるのよ!あなたを見ていてつくづく思ったわ、貧しいって嫌だなあって。私はあなたを決して許さない!あなたが惨めに破滅して泣きながら死んでいくところを見届けてあげる!いい!?あなたは絶対に幸せになんかなれないのよ!」風太郎は緑の言葉にいつしか机の脚にかじりついて震えていた・・。そして・・風太郎は荻野に逮捕、連行される。病院で荻野の妻が風太郎らしい人物に階段から突き落とされ怪我をしたらしいことが発覚したためだ。「俺への警告のつもりだったか?残念だったな。」荻野は冷たく風太郎につぶやく。
パトカーで移送中、女が担架で運ばれる姿が風太郎の目に入った。母親にそっくりなあの女だ。パトカーを運転する警察官が説明する。ホームレス同士のいざござで殺されたらしい、女は大金を持っていたからだと。!!「どうして!?なんでだよ!どうして!金が一番じゃないのかよ!金で幸せになれるんじゃないのかよ!どうして!?なんでだよ!!いやだあああああ!」風太郎は狂った動物のようにを叫び続けていた・・。

#7
逮捕された風太郎は荻野の執拗な取調べを受ける。荻野が怒気を込めて興奮しているのに対し、風太郎は虚ろだった。風太郎は揺らいでいた、金がすべてではないのか!?獄に放り込まれ放心している風太郎。風太郎は思い出していた、あの日のこと・・。
まだ幼い風太郎は酔っ払いの懐から財布を盗む。それは風太郎にとってしかたのないことだった。家庭環境の悪さが風太郎をそうさせてしまったといっていいだろう。生きるための行動だった・・。その時、その現場を見ていたのが荻野の弟である親切にしてくれていたお兄さんだった。お兄さんは風太郎に財布を返すように言う。だが、母親も死んで心の支えがなくなっていた風太郎にその正論は響かない。母親は金がなくて薬も満足に買えなかった・・。その場を逃げ出し、そして追いかけてくるお兄さん。いつしか人気のない場所で、風太郎はお兄さんをバットで撲殺していた。そのバットは、お兄さんと野球をして遊んでいたものだった・・。
(何を今更迷ってる)風太郎は突然立ち上がり「銭ズラ~。」と両腕を広げて何度も獄中で叫んでいた。それはまさに悪魔の儀式だ。風太郎は、世の中で金が一番だということを自分が証明してみせると誓っていたのだ・・。それが悪魔に魂を売り渡して銭ゲバと化し、そして生きていく風太郎の戦いなのだ。自分自身の手で、それを証明していくしか風太郎の生きている存在価値は見出せない・・。世の中金がすべてだと・・。
次の日。取調べ室では風太郎はいたって冷静。「奥様のお怪我いかかですか?心配しているんですよ?僕はあなたのこと。これって別件逮捕ですよね?まずいんじゃないんですか?荻野さん。」「うるせえ!」荻野としては今までの事件も洗いざらい白状させるチャンスとみていた。なのに、風太郎の落ち着き払った顔!荻野は突然相棒に呼ばれる。荻野の妻が階段から突き落とされた時間、風太郎には完全なアリバイがあることがわかったのだ。そして・・その犯人が自首してきたというのだ。その男は風太郎と瓜二つの顔をしていた!この男、野々村真一は伊豆屋の風来坊男。前から伊豆屋の人達からそっくりだと聞かされていた風太郎は目をつけていたのだろう、何かに使えると。実際真一は金にルーズで300万をつかませたらすぐに転んだ。(だから金で動くんだって人間は)冷たく微笑む風太郎。結局風太郎の身の潔白は証明され釈放される。「お世話になりました。大丈夫ですか?こないだの話ですが、奥様の手術の件、いつでも言ってきてください。」風太郎は荻野にうやうやしく頭を下げ署をあとにする。荻野は悔し紛れに机を殴りつけた。
なじみで通っていた伊豆屋の身内も利用した風太郎。直接関係のない人間さえも巻き込み、もう彼は引き返せない所まできてしまった・・。一度、伊豆屋の人達に風太郎はこんなことをしたことがある。貧乏だといつも言っているがどこか楽しげな伊豆屋の面々。心が大切と言い合っていた。(ならそれが本当かためしてみよう)風太郎は金を店の前に置いて出て行く。それを見つけた伊豆屋の人達。風太郎が物陰で見ている前で、その金を警官に届けたではないか!風太郎はそれが許せなかったのかも知れない・・。真一を使うことは自分にないものを持っている伊豆屋の人達への復讐も込められていたのだろう・・。署をでた風太郎を緑が迎えにきていた。その緑の顔は冷めたものだった。
緑は風太郎の本心を見た。絶対に許すわけにはいかない。茜にもそのことを話したが、茜は風太郎への気持ちを変えることはなかった・・。その日の夕飯の団欒はぎこちないものだった。緑も茜も一言も口を利かない。風太郎だけがその口と手を動かしておいしそうに食べている。風太郎は突然笑いだした。「やめましょうかこういうの。・・緑さんの思ってるとうりですよ。ぜ~んぶ僕がやりました。」ひとつひとつの犯行を包み隠さず白状する。その顔は楽しそうだ。「ま、流れとしてはこんな感じですかね。どうですか?そんな男といっしょに食事している気分は?」・・緑はひきつった顔を風太郎に向け、「・・私あなたが獣かと思った。でもあなたは人間、それが今わかった。人間としての苦しみを味わうべきなんだわ。死ぬよりもつらい苦しみをね。」「勝手にしてください。どうせ地獄への片道切符しか持ってないんです。怖いもんなんかないんですよ。」風太郎は出て行く。
茜はそれでも自分は愛していると風太郎に告げる。やさしく穏やかに・・。「おまえ馬鹿なんじゃないのか?」「愛はあるんだよ。風太郎さん。」「くだらない真似するな・・。」冷めた目で、お前のことなんてどうでもいいと告げる風太郎。茜は笑いながら泣いていた・・。
真一のことで風太郎に迷惑がかかった。そう思い込んでいる伊豆屋の人達が会社に謝りに来ていた。社長室で全員が頭を下げる。その姿に苛立つ風太郎。真一は適当な嘘をついて風太郎に頼まれたことは警察に言っていない。どうせ真一はたいした罪にはならないだろう。「ひとつ聞いていいですか?前に言ってましたよね、大切なのはお金じゃない、心だって。本当にそう思いますか?」風太郎の問いに、「うん。思うよ。」・・・「くだらねえ負け惜しみ言ってんじゃねえよ!!帰れ!帰って虫けらみたいな人生せいぜい楽しめよ!!帰れって言ってんのが聞こえないのかよ!!」風太郎は怒鳴り散らし伊豆屋の主人を突き飛ばす。風太郎になついていた女子高生の由香は、その豹変振りに声もでない。((これがいつもおいしそうにベラ定食を食べていた人と同じ人なの!?))まだ金になびかない人間がいる、その事実が風太郎を苛立たせるのだろう。金を人生の終着点に選んだ風太郎のこれは、悲劇なのだ。そのことに自分自身が気づいていない・・。
緑は風太郎の生まれた港町に来ていた。風太郎が家族と住んでいた家をおとづれる。そこで背を測ったあとのある柱を見つけた。たしかに風太郎にも家族団欒のひとときがあったのだ。もし、風太郎の家族が人並みの環境なら彼は・・。海を眺めている緑は健蔵と遭遇した。緑を見つけて大笑いする健蔵。この男が風太郎とその家族を狂わせた!健蔵は10億入ったアタッシュケースを引きずっている。「これで死んでくれって。あいつ馬鹿でしょ?」健蔵はとりあえず故郷に帰ってきて1億寄付するそうだ、昔自分を馬鹿にした連中を見返すために。「あっ。軽蔑したね?したした~。だめだめ親戚なんだから僕達は~。グフフフ。」健蔵は緑を指さし楽しそうに笑う。「とってもくだらない人ですね。もちろん軽蔑します、心の底から。」ほう、と健蔵は対して気にしていない。「約束されたんですよね、その10億で。息子とした約束、ひとつくらい守ったらどうですか?じゃこれで失礼します。もうお会いすることもないと思います。死ぬんですもんね?」笑顔でその場を去る緑。だが、車に戻り泣いていた。風太郎のことをちゃんと憎むためにこの町に来た緑。だが・・今の健蔵を見て、そして会話して何かを感じたのだろう。自分は愛されて何不自由なく育ってきた。風太郎の生きてきた片鱗を改めて覗いてしまった緑。ただ泣くしかなかった・・。
その頃。荻野の妻の容態が急変した。一刻も早く移植手術をしなければ助からない・・。荻野は死んだような顔でいつのまにか風太郎のいる社長室に足が向いていた。「・・先日のお話ですが。妻の手術の費用・・援助していただけるという・・お願いできませんでしょうか・・。」下を向き、悔しさと悲しさでいっぱいの荻野。「僕は・・警察を辞めます・・。妻の治療に付き添ってやりたいんです・・お願いします。」風太郎はその言葉を聞いて、荻野の傍にいく。そして肩を押さえた。「どうして下を向いてるんですか?あなたは正しい選択をしたんですよ?よかった・・よかった。」やさしい声で言う風太郎。とても穏やかでやさしい・・。しかも風太郎は名医への紹介状も用意してくれていたのだ。風太郎は本当に、荻野のために前から準備してくれていたのだ。が!大金の入ったアタッシュケースを渡す前に荻野に一言言わせる。「結局・・大事なのは・・金だ・・。」荻野は泣きそうに下を向きながら言った。帰り道・・荻野は泣き続けた。金の入ったアタッシュケースを抱えひたすら泣く。荻野の中で何かが確実に無くなった瞬間だった・・。
緑が帰宅すると、風太郎が自室の寝室で静かに椅子に腰かけている。その顔は眠ってるようにみえたがたしかに起きていた。ただ、何の感情もない。ふと、なにかがぶら下がっているのに気づいた。・・?それは茜だった!!「あかねええ!!」緑は叫ぶ。妹の死を知ったのだ!風太郎の目はただただうつろにその茜を見つめていた・・。

#8
茜が死んだ。なぜ妹が首を吊って死ななければならない!?緑は風太郎に叫ぶ。「茜に何をしたのよ!」「・・何も。」「茜はあなたを愛してたのよ!」「でも僕は、人を愛さないんですよ・・。」それを聞き緑は、泣きながら風太郎にナイフを突きつける!その腕を掴み、薄ら笑いを浮かべ、「だめですよ緑さん。僕を殺してもかまわないけど、緑さん人殺しですよ?僕の仲間になっちゃいますねえ?緑さんには似合わないよ!」風太郎は緑を突き飛ばした。「それに僕を見届けるって言いましたよね?言いましたよね!!」緑は泣き続けるしかなかった・・。「茜・・ごめん・・ごめんね・・。」
朝。応接間で緑はお茶をしている。冷めた表情。緑はよく眠れないのだろう・・。そこへ、うなり声と泣き声が合わさった声が別室から響いてきた。<うあああ~~>風太郎がうなされているのだ。風太郎は寝るたびにうなされている、それをやさしく抱きしめてくれていた茜ももういない・・。緑はそのうなり声を冷たい目で聴いていた。あの明るかった三國家の面影はどこにもない。豪華な屋敷の中は、孤独と悲しみしかない空っぽなのだ。
伊豆屋からヤクザ風の男達が数人店からでてきた。帰宅してきた由香は店に入るのをためらい、少し空いた扉から中をうかがう。ハッとする由香、店は散々に荒されていたのだ!家族のみんなは途方に暮れている・・。野々村真一(由香の兄)は多額の借金を作っていたのだ。風太郎に雇われて手に入れた300万も返済に当てたがそれは利息分。真一はどこかに姿をくらましてしまい、伊豆屋の方に取り立てがきたのだろう・・。生命保険にサインしろと脅され、家族のみんなは恐怖と悲しみで言い争いを始めた。由香はその光景を呆然と眺め、そして伊豆屋から背を向け歩いていってしまう・・。
「ひとつだけ教えて欲しいことがあります。なんでヒロシ・・殺したんですか?」荻野は三國造船の社長室に顔を出していた。風太郎に警察を辞めたことを告げて、どうしても知りたいことがあったことを切り出す。荻野はずっと知りたかった、どうして弟は死ななければならなったのか?「納得したいだけなんです。」「・・ヒロシさんのことは大好きでした。」風太郎は笑みを浮かべて言った。荻野にすべてを隠さず話す。とても自分にやさしく接してくれていたこと、そしてあの夜、お金を盗んだ自分を叱ってくれたこと、それなのに自分は逆上しヒロシを殺害してしまったこと。「・・そうですか・・。18年間考え続けてきた答えが、ようやくわかりました。弟は殺されるようなことをしたわけじゃなかったんですね・・よかった・・。」荻野はホッとした表情でうつむいた。「死ぬ前の日にね、あいつ電話かけてきたんですよ・・。」それはヒロシが風太郎をひきとりたいという内容だった。金のせいで母親が死んだと思っている風太郎をヒロシは心配し、自分が家族になろうと決心してくれていたのだ・・。もし、ヒロシにひきとられていれば風太郎の人生も変わっていたのではないのか・・?「・・僕はいずれにしろ同じような道を辿ってたと思いますよ・・。」それを聞き荻野は切なそうに部屋を出て行く。弟を殺害した憎むべき容疑者はやはり風太郎だった。それでも、荻野はその風太郎の援助で妻の移植手術をすることができるのだ。荻野も運命に翻弄されてしまったひとりなのかもしれない・・。
伊豆屋に突然顔を出した風太郎。「この間はすいませんでした。」風太郎は頭を下げる。そして、いつものベラ定食を頼み、おいしそうに食べ始めた。どこか伊豆屋の人達の様子がおかしい。この間、風太郎が罵倒したことをまだ怒っているのだろうか?だが、それは違った。「・・あのお願いがあります。お兄さん・・このとうりです。お金2000万貸してください・・。」突然土下座する女。「・・僕がお金持ちだからですか?返せるあてのない借金を作っても別に困らない、そういうことですか?」「いや、あのっ。」主人が慌てて訂正しようとするが、そのままうつむいてしまう。「そういうことですよね?」「・・そのとうりです。お願いします。」女は風太郎を見上げて、また土下座した。「ですよね・・。この間も言ってたじゃないですか?大事なのは心だって。そういう計算するのも心なんですか?・・お断りします。笑顔で受け入れればいいじゃないですか、どんなことがあろうとも。ご馳走様でした。」「待て!!」立ち去ろうとする風太郎に主人が叫び、包丁を突き出していた。「馬鹿にしやがって!おまえなんだろ!?真一にあんなことやらしたのおまえなんだろ!?なあ?黙っててやるよ!警察には黙っててやる!だから・・」風太郎に向けた主人の片方の手は、くれになっていた。「金よこせ!金・・よこせ!!」主人は泣いている。いつのまにか女も、主人のとなりに並んで包丁を風太郎に向けていた。「どこ行っちゃったんですか?あれだけ大事だって言ってた心は?」「家族を守るためだったらなんだってするわよ!!お願いお金ぇ!!」・・・「がっかりだな。がっかりだ。僕賭けをしてたんですよ、自分でね。あなた達が僕にどういう風にするのか。そういうので決めようと思ってね。」そして笑う。「最悪の結果がでてしまいましたけどねえ!まあ、あれですよね?くだらないってことですよね?人間なんて・・。」それを聞いて、主人が包丁を突き出したまま突っ込んできた!それをかわして主人を押さえ込み、突き飛ばす。泣きくずれる主人を見下ろす風太郎の顔は切なさで歪んでいた・・。さっき会社に由香が電話してきたのだ。そしてホテルに風太郎を連れていく。由香は自分の体を売ってお金を得ようとしたのだ・・。風太郎は由香を罵倒し追い払う。あんなに純粋で真っ直ぐだった女の子が・・。自分がビルで撒いた時の金を拾って、それをわざわざ自分に返した子、「嫌いになるからね。」と自分に説教してくれた子が・・。風太郎の心は散々に乱れた。そして伊豆屋の現状を知り、様子を見にやってきた。そしてここでも・・これだ!((おまえらだけは違うんじゃなかったのかよ!!))自分とは違う清い心を持っていた伊豆屋の人達を嫌っていたはずの自分。だが、同時にそこは唯一の安らぎの場所でもあったのだ、この世界にある綺麗な場所だったから・・。「さよなら・・。あんたらみたいのがいるから、この世界は腐るんだよ!」風太郎は叫び、そして虚空に向け放心した笑みを浮かべていた・・。<結局、自分と同じだった・・>
夜。三國家の応接間にハルが客を招きいれた。健蔵が大金の入ったアタッシュケースを引きずって笑顔で現れる。「ああ、緑ちゃんもいて!こいつひとりだと怖いんだもん~!」陽気な健蔵に無表情の風太郎。そして健蔵から顔を背ける緑。まるっきり歓迎されてないのもかまわずに健蔵はしゃべり始めた。自分は贅沢でもポケットに6万5千円くらい入ってるのが性にあってると笑う。せっかくの10億をもてあましていたのだ。地元に一億寄付したらしい?健蔵、あとは何をしていたのだろうか?女の子を集めて豪遊程度だったのだろう。「たいしたことに使えないんだよ、金をさ。情けないんだけど。」健蔵は巨大なジェラルミンのようなアタッシュケースを叩いて、「10億もってフラフラしてるとさ、なんか空しくなってきちゃってな。だってさ、これ持って歩いてて、つくづく思うんだけど、結局は紙切れだろ?これ。価値があるってことになってるからありがたがるんだけど紙だぜ、紙。俺はよ、好きでフラフラしていたいだけなんだよ。まあそのために金は必要なんだけどな、金に囲まれて暮らしたいわけじゃないんだよ。」ガラガラと健蔵が応接間をアタッシュケースを押して歩き回っている。「おまえだってそうだろ?風太郎。おまえ大金持ちになってなんかいいことあったか?全然幸せそうに見えないしさ。」「・・死にたくないんでしょ?」ボソッと風太郎が言う。「生きたいんでしょ?」風太郎は静かに笑って健蔵に向いた。健蔵も笑い返す。「死にたくないよ。人間だからな。」でも、そこまで息子に嫌われてるなら花々しく散ってやろうと思ったと言う健蔵。風太郎をそういう風にしてしまったのは自分だろうし。だが!「これは返すわ。金と心中はごめんだ。」健蔵は風太郎の向かいのソファに座り、するどく言っていた。「・・お母さんから何度も聞かされました。お父さんはあんな人じゃない・・。」健蔵は会社に濡れ衣をきせられ、自暴自棄になってしまった。いつも一生懸命働いていたのに・・。だからお父さんを恨まないであげて。「だから自分の手では、あなたを殺さなかった。お母さんと約束したから・・。」その言葉に、緑も風太郎をいつしか見つめていた。「・・いい女だねえ。」健蔵は亡き妻を思い出し、天井を見上げ嘆息する。「・・どうぞ、生きてください。たったひとりで、お好きなよーに。生きてください。」「おまえはどうすんだよ?」「さようなら・・お父さん。いつまでもお元気で。」風太郎は立ち上がった。「風太郎!ひとつだけこの世界のルールを教えてあげちゃおうか?子供はさ、親より先に死んじゃいけないんだぜ。知ってたか?」・・・感情のない笑みを健蔵に向け、「親によるでしょ?」バタン!扉は閉まってしまう。残された健蔵は、引きつった顔をするしかなかった・・。
後日。車で出かけようとする風太郎の車に緑が乗り込んでいた。「死ぬの?罪の重さが辛くなった?どの道破滅するから?」「・・僕が間違ってなかったってわかったからですよ・・。」「・・私が見届けてあげるわ。約束どうり。バカな人間が死ぬってだけの話でしょ。」車は、風太郎とその母親の思い出の小屋にたどり着く。そしてその小屋で、風太郎はダイナマイトを体に巻きつけ、長く伸びた導火線に火を付けていた!

最終回
「わかったよ~。わかったって。俺はもう死ぬよ。それが望みだろ?消えてやるさ。でもな、俺は間違っていたとは思わない、これっぽっちも思わない・・。この狂った世界で生きてる奴はみんな銭ゲバだ、それでよきゃ、どうぞお幸せに・・。」風太郎は自重気味に不気味な笑みを浮かべ、自分で巻きつけたダイナマイトの導火線に火をつけた。長い導火線に点いた火花が、少しずつ少しずつ風太郎にせまってくる。場所は海岸沿いのボロ倉庫小屋。まだ小学生だった自分と母親がよくいっしょに非難していた場所、父親・健蔵の暴力から逃げてきた時、一時的によく使っていたのだ。そこは母親との思い出の場所でもある。だが同時にそこは、自分が銭ゲバになると誓った場所でもあったのだ。柱に釘で書き込んだ字がまだ残っている。<金持ちになって絶対幸せになってやるズラ>まだ子供と呼ばれる時期にこう決心するしかなかった風太郎。そして彼は事実、金持ちになった、超がつくほどの。数え切れない重大な罪と引き換えにしてだが・・。
(幸せ)。自分で柱に刻んだ幸せという字を睨みつけている風太郎。その顔は鬼の形相だ。その間にも火花は自分に迫ってくる。幸せという文字を睨みつけながら、風太郎は夢を見ていたのかもしれない・・。
((まだ小学生の自分が、母親におこずかいの使い方を注意されている。おこずかいは好きなものを買うためだけじゃない、限られた金額をうまく使うためには、時に我慢することも大切なのよ。母親がやさしく教えてくれる。そして、健蔵がキャッチボールをしてくれた。父親の顔は穏やかでやさしい。母親の病も手術で直り、健蔵と笑い合う自分。健蔵と母親は満面の笑顔を浮かべていた。))
((ある日財布を拾う。となりに住んでいたヒロシ兄ちゃんに相談。そこへふたりの警官が歩いてきた。警官に財布を届ける。その警官は荻野とその相棒だった。えらいな!と自分を褒めてくれる荻野。ヒロシは荻野警官と兄弟だったようだ。ヒロシも自分に笑顔を向けてくれた。))
((大学合格発表の日。ひとりの女性と知り合う。受験番号札をお互い落としたのがきっかけだった。その女性・茜と付き合い始める自分。とても楽しい。しかも茜の姉・緑はとても美人だった。ちょっと緑に引かれる自分に茜はヤキモチ。でも、茜がやっぱり一番なのだ。。なんか自分と似ていると言っている変わり者の友達ができた。その男は彼女がいない。てっきり自分にもいないと思っていたのだが、自分には茜がいるのだ。それを知りくやしがる友達。。そんなたわいのない日常が楽しくてしかたない。その友達と夜中工事のバイト。そこで知り合ったおじさん・寺田。話が好きでいつものようにふたりに話かけてくる。どうやら理屈っぽい寺田の正体は劇団員だったようだ。またチケット買わされそうで逃げる自分と友達。。))
(幸せ)という字を睨みつけていた風太郎の目に、不安の色が見えはじめていた・・。火花が自分に到達するには少しまだ時間があるが・・。
((茜の父親・譲次との初体面。緊張している自分がいる。だが、譲次もすごく緊張しているようだ。そこへ寝起きの緑が現れる。この人はざっくばらんな性格なのだな。。譲次は照れくさそうな顔をして下を向いていた。なんだかこの家族の人達ととても仲良くなれそうだ。))
((緑にはシラカワという時計好きな彼氏?がいるようだが、緑は頼りないと思ってる。。ボーナスも給料も全部つぎ込んで一ヶ月カップラーメンで過ごして50万だして買った時計を大事そうに自分にみせるシラカワ。でもとてもいい奴そう、今度いっしょに飲もうと自分を誘ってくれたのだ。))
((よく行くお店がある。そこのシェフと友達の自分。メニューにはないんだけど、自分の故郷を知っているから故郷のおふくろの味、ベラ定食を作ってくれる。うまい!ここのお店の家族で由香というかわいい女子高生がいるんだ、それと自分の顔とうりふたつの男も。。ともかく、いい人達。))
((社会人になり、健蔵とふたりで飲む。今日は自分がおごると健蔵に言っていた。感慨深げになる健蔵、とてもうれしそうだ。社会にでると一番は金だと思うことがあるかも知れない、でも心だと言う健蔵。そんなくさい父親の言葉をなんの抵抗もなく聞いている自分。ともかく、乾杯!))
火花の音がだんだん近づいてきた・・。だがこの脂汗はなんだ?死ぬことへの恐怖ではないはずだ!?何か別の焦りが風太郎にはでてきてしまっていた・・。
((茜との結婚式。母親も健蔵も喜んでくれている。茜はとても綺麗。緑は妹に先を越されてちょっとくやしそうな顔をしている。そんな緑と同じ会社に入った自分。まだまだ一人前じゃないからたまに飲み屋で愚痴を緑に聞いてもらったりしてるのだ。。そこの飲み屋の女の子、ハルちゃんも可愛いんだけど・・。))
歯を食いしばり、くやしそうな顔をする風太郎。あんなに長かった導火線もいつの間にかだいぶ短くなってきていた。バチバチッ!と音と煙が自分に向いてきている・・。
((茜が赤ちゃんを産んだ。そう、自分は父親になったのだ。朝、振り返ると茜が赤ん坊を抱いて、「いってらっしゃい。」と自分に笑顔を向けた。その時、自分はしみじみ感じていたのだ・・幸せだと・・。))
「うあああ~!!!」小屋の中を逃げるように転がり回る風太郎!「あああ!開けろ!!開けろぉ!!緑ぃ~開けろ~。」だが外で自分を見届けているはずの緑の反応はない。手は後ろ手に自分で縛ったままでとてもとれない。もう火花は自分の体に到達しようとしていた!思わず唾で火花を消そうと何度も吐く。だが、もう風太郎の体に火花は到達していた・・。目を向く風太郎!!
離れた場所でその小屋が爆発するのを緑は見届けた・・。その目には涙が伝う。伊豆屋には2000万入った宅配便が送られてきた。主人は何を思っただろう、由香も・・。だが、<ベラ定食ごちそうさまでした。おいしかったです>の手紙に胸を打たれる伊豆屋の人達。真一が怠けながらも店を手伝うその伊豆屋には、その手紙が額に飾ってあった・・。そして妻の手術が成功し、微笑む荻野・・。
「初めてだな、おまえと飲むのは・・。」悲しい顔をして誰も居ない向かいの席に乾杯する健蔵。健蔵は新聞で風太郎の自殺を知ったのだ・・。その顔は悲しさでいっぱいだった・・。

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